ラスベガスのギャンブルガイドは、「スロットマシンはやめたほうがよい」と説明すべきである。倍率はプレーヤーに不利になっている。こういう認識に対抗し、スロットマシンをプレイしてもらうため、あるカジノはマシンの払い戻し比率、すなわち一ドルを賭けた場合の払い戻額の期待値を宣伝しはじめた。また別のカジノはさらに一歩進めて、払い戻し比率がなんと1以上のマシンを設置した。
こういうマシンは平均すると客側が儲かることになる。このマシンを見つけて、そこでプレイすればおそらく儲かる。もちろんカジノ側はどのマシンがそれであるかは明らかにしない。カジノの平均払い戻し率は90%で、中には120%のマシンもあると宣伝するのであれば、120%のマシン以外のものは90%以下の払い戻しであると推察できる。客に簡単に儲けさせないよう、120%のマシンが毎日同じ場所に設置されているとは限らない。つまり今日の「出る」マシンは明日の「出ない」マシンかもしれないのだ。さて、どのマシンが「出る」マシンでるかを推測するにはどうすればよいだろうか。
《ケース・ディスカッション》
このケースには正解がない。もしあったとしても見解が異なるであろう。それにもかかわらず戦略的思考により、ある程度の推測を行うことができる。自分をカジノのオーナーの立場に置いて考えてみよう。オーナーは客が出ないマシンを少なくとも出るマシンと同じだけプレイしてくれないと儲からない。とすれば払い戻し率の高いマシンを隠すことができるだろうか。もし人々がたくさん払い戻しているマシンでプレイすれば、そのうちに最も払い戻し率がいいマシンを見つけてしまうのではないだろうか。
実際は必ずしもそうではないし、特に時間の制約がある中ではそのようにはいかない。払い戻し率の高いマシンは、ジャックポット(大当たり賞)によって大部分を還元するようにセットする。一回のプレイに25セントかかるスロットマシンについて考えてみると、四万回に一回、一万ドルのジャックポットが出るなら払い戻し率1である。カジノ側が三万回に一回と確率を上げてやると払い戻し率は1.33になる。
しかしこのマシンでプレイしている人を見ても、25セント硬貨が次から次になくなっていくのを見るだけであろう。そこから得られるごく自然な判断は、これは「出ない」方のマシンであろうということだ。最後にはマシンがジャックポットを出すころには、マシンは切り替わっていて率の悪いものになっているかもしれない。反対に最も出ないマシンは、少額を高い確率で払い戻すようにセットすればよい。払い戻し率が80%のマシンを考えてみよう。五回に一回の割で1ドルを払い戻すとすれば、そのマシンは頻繁に音を立て、皆の注目とさらにはお金を引き寄せるであろう。
おそらく経験豊富なスロットマシンのプレーヤーは、このことを見通しているであろう。しかしそうなれば、カジノ側は逆の状況をつくればよい。どちらにせよ、カジノはどういうマシンが最もプレイされたかを日々観測できる。最も多くプレイされるパターンのマシンを低い払い戻し率にセットすることができる。払い戻し率の1.2と0.8には大きな差があるように見え、そしてその差が儲かるか損するかの分かれ目のように思えるが、限られた試行錯誤によってその差を見極めるのは非常に難しいことだ。
カジノはこのような推測を難しくするどころか、たいていは間違えるように意図する。ラスベガスのカジノはボランティア活動ではないことを思い出すのが賢明であろう。よく出るマシンを探そうとして大抵の人は見つけられない。もし見つけられるのであれば、カジノはこの制度を取り止めるであろう。最も多くプレイされているマシンは、もっとも出るマシンではないと思って間違いない。