ケース・スタディ{その21 寄付の構造(2)ケース・ディスカッション}

 

 この問題の解答は、経済学者のアナット・アドマティとモッティ・ベリーによって最近になって明らかになった。回答の特徴は、合計寄付額は利子率決定変数Pにかかわらず決まるということである。さらに、寄付をする人々にとっての価値の合計額まで寄付金を集めることができるということも示される。だからこのキャンペーンが価値あるものならば金を集めることは可能である。

 いつものように、最後から始めて逆戻りしながら考えを進めよう。この問題では、終了までの決まった期間というものはないが、この交渉が終結する寄付レベルは決まっている。寄付の目標をTドルとするとき、Tドルが達成されたときに交渉は終了する。さて、寄付約束額が十分Tドルに近づくと、その時点で順番の人はさらに次の人の寄付を待たないで不足額を払ってしまうであろう。

 どの程度まで近づけば十分近づいたといえるだろうか。寄付を次の人に回す段階で最善の結果は、次の人が不足額を埋め、目標を達成してくれることである。だから自分が寄付しない場合、その人が得られる価値の最大値は翌日の価値相当額、すなわちPである(今日の価値をVとする)。反対に今日、不足額のXを寄付するなら、得られる価値は寄付額を差し引いた、V-Xである。

したがって、次のような条件下では、寄付約束の合計額をTドルまで引き上げる価値がある。V-X≧pVすなわち、X(1- )、つまり寄付額が利息喪失分より少ない場合である。さて、両者が先読み推量を行い、合計額が、T-1-p)Vドルまでいけば、翌日には目標が達成されるとわかる。次に、寄付約束額がこの額{T-(1-p)ドル}に近づけば、この額まで引き上げて翌日の到達を期することは意味がある。

もっともその額以上まで額を引き上げるインセンティブはない。というのは、それは次の人の寄付額を減らす効果を持つだけだからである。もちろん約束合計額を、Tドルまで引き上げるインセンティブもない。なぜなら、目標達成が延びることによるコストの方が小さいからである。だからもしyだけの寄付の約束をして合計が、T-(1-p)になれば、その人にとっての価値は、翌日にyを支払ってVを得るのだから、p(V-y)になる。

そうなれば、一日待って、立場を入れ替えることもできる。その場合、相手は寄付約束額がT-(1-p)Vドルになるように寄付を行い、そのとき、こちらは、X=(1-p)V寄付する価値がある。したがってこちらにとっての価値はp2 V-(1-p)V]=p3V となる。これは二日後にキャンペーンが終了する場合の価値マイナスこちらの寄付額である。寄付するのと待つのを比較すると、次の条件で待つよりも自分で寄付してしまったほうが良いことがわかる。 y(1- 2)

個々の計算においては、各人がすでに寄付してしまった額は考慮に入れていないことに注意する必要がある。寄付する人々は常に先を考えて後どれだけ支払うべきかを考えているのであり、すでに支払う約束をした額については考慮する必要はない。ここまで、最後の二日間でどれだけの寄付が集まるか分かった。同じ考え方を適用していくと、キャンペーンが目標額達成までに要する日数と、各段階において人々が支払う金額の計算をすることができる。この金額の合計が募金額になるのであり、その額は次のとおりである。

(1-p)V+(1-p2)V+p(1-p2)V+p2(1-p2)V......=2

最初の二項は、上で計算した最後の二日間の寄付額である。面白いことに寄付の合計額は利子率pによって変化しない。また、その額は寄付する二人にとっての価値の合計(2V)に等しい。各人にとっての価値相当分の100%の寄付を引き出すのは不可能なのである。このことは、募金キャンペーンの結果は人々がどれだけプロジェクトに価値を置いているかを如実に表しているといえる。