人生のいろいろな面から戦略に関する短いストーリーをいくつか紹介し、最善の行動について初歩的な考察をすることから始めよう。これらの話と似たような状況に直面して、うまく解決したり、あるいは試行錯誤をした読者も多いと思う。また、解決法に驚く人もいるかもしれないが、驚かせることがこの章の目的ではない。この章の目的は、このような状況が世間一般に広く見られるもので、論理性のある問題点を含んでおり、体系的思考により効果的戦略の処方箋を見つけ出すつもりである。
ショートショートは、いわばコース料理の前菜で、食欲をそそるように作られている。ホットハンドという言葉をご存じだろうか。バスケットボールのラリー・バードやアイスホッケーのウェイン・グレッキー、サッカーのディエゴ・マラドーナのシュートは必ず決まるように思えるときがある。スポーツのアナウンサーは、連続的に成功する一時期を称してその選手はホットハンドの状態にあるという。
しかし心理学者のトーマス・ギロビッチ、ロバート・バローン、及びエイモス・ツバースキーによれば、これは誤った認識であるという。コインを何度もトスすれば表が続けて出ることもあるだろう。心理学者は、スポーツ解説者が言っていることは、長いシーズンの中でたまたまコインのトスで表が続いたことと同じではないかと思って、厳密なテストを行っている。
バスケットボールの選手のシュートを全部調べて、シュートが決まった後に、次のシュートも続けて決まる確率を調査した。同様に、シュートをミスしたときに次のシュートが決まる確率も調べた。もし、シュートが決ったときの次のシュートの方が、ミスしたときの次のシュートよりも、成功する確率が高いのであれば、本当にホットハンドはあるといえるだろう。
彼らはフィラデルフィア・セブンティシクサーズのバスケットボールチームを対象に調査した。しかしその結果はホットハンドの見方を否定するものであった。シュート成功の次のシュートは決まりにくく、シュート失敗の次は決まりやすいことがわかった。これはアンドリュー・トニーというシュート連続成功で有名な選手の場合も同様であった。
このことから、逆に「ストロボハンド(ついたり消えたりを交互に繰り返す)」とでもいうべき現象があるといえるのだろうか。ゲーム理論では次のような説明がなされる。テストの結果はシュート連続成功を否定しているのであって、ホットハンドを否定しているわけではない。シュート連続成功は、シューター個人の状況示すホットハンドと違って、オフェンスとディフェンスの戦略の相互作用に影響を受ける。