ケース・スタディ{その8 ノブレスオブリージ(大国の義務)}

 

 OPECの重要な特徴は、構成する国の規模が様々であることだ。サウジアラビアは圧倒的に大きな原油生産能力を持っている。規模の大小でカルテル違反を行うインセンティブに差が出るだろうか。クウェートのような小さな国とサウジの比較でこのことを考えてみよう。協力状態ではクウェートは一日に100万バレル、サウジは400万バレルを生産するとしよう。

 両国には協定を破って一日に100万バレル多く生産する誘惑がある。だからクウェートの選択は100万か200万でサウジは400万か500万である。その結果として全体の生産量は500600700万のいずれかになる。それぞれの場合の1バレル当たりの利益(価格-生産コスト)は、16ドル、12ドル、8ドルであるとする。このことから、サウジとクウェートの生産量と利益は、以下のようになる。

 [サウジの生産量が400でクウェートが100の時の利益は6416]、[サウジの生産量が400でクウェートが200の時利益は、4824]、[サウジの生産量が500でクウェートが100の時の利益は、6012]、[サウジの生産量が500でクウェートが200の時の利益は、4016](単位:100万ドル/日)。クウェートには協定を破って200万生産するという絶対優位の戦略がある。サウジにも絶対優位の戦略があり、それは協定を守って400万生産することである。例えクウェートが協定を破ってもサウジは守った方が得である。この場合囚人のジレンマが起こらないのはなぜか。

 

《ケース・ディスカッション》

 サウジは利己的な理由からだけでも、協力した方が得である。生産量を低く保つことにより、市場価格は高くなり、OPECのすべてのメンバーにとって利ざやは大きいものになる。OPECの生産量全体に占める割合が小さな国は、カルテルの高価格維持という「共通の利益」に協力しも得は少ない。しかしその割合が大きければ、高利ざやによる恩恵を多く受けることになり、生産量を抑制したことによる代償を十分に受けられる。

 これにより、囚人のジレンマを脱する別の方法があることがわかる。それは、協力的に行動することによって生まれる大きな利益を見つけることである。同様のことが各種の同盟で見ることができる。大政党と小政党が連立政権を作っている国は多い。通常、大政党は責任にある立場をとり連立が成立するよう妥協を図るが、小政党は特定の利益を主張し、極端に走ることが多い。

 イスラエルの連立政権でのいくつかの宗教系小政党の行動はその例である。NATOの同盟にも同様の例が見られる。米国は応分以上の防衛費を出しており、それにより西ヨーロッパは利益を得ている。マンカー・オルソンはこういった現象を「小国による大国からの搾取」と名づけている。