アメリカズカップ(ヨットレース)でどのようにしてリードを守るか。互いのヨットは相手の状況を観察することができるので、デニス・コナーがジョン・バートランドの作戦を模倣するのは比較的容易だった(ヨットレースではトップを維持する方策は、二位の戦略を真似ればいい)。ところが選択が同時進行的であれば、より複雑なゲームになる。そのときに観察に代わって予測が必要になる。
ブリッジのやり方に、デュプリケーとブリッジというものがある。デュプリケートブケッジでは、同じ手札を持っている他のチーム(もちろん戦う相手は異なる)と比較して、ある手札のもとでどれだけうまくプレーできたかを評価する。自分がAチームに属しており、Bチームのゴーレンとゼックをリードして最終勝負に来たとしよう。こちらの手札はまずまずであった。
6ノー・トランプなら確実に作れるが、7ノート・トランプを作れる可能性は50%であった。もちろん、別の部屋で同じ手札でプレーをしているゴーレンとゼックも同様である。もしこちらが7を狙い、成功したら、確実にトーナメントの優勝者になれる。7を賭けて失敗した場合でも、ゴーレンとゼックも7を賭けて負ければ、やはりこちらが優勝だ。もし両チームが6を賭ければ、共に確実に作れるのだからこちらが優勝する。
こちらが6の場合、相手が7を賭け成功すれば、相手が逆転優勝となる。こちらの優勝の確率を最大にするためにはどうすればよいか。ゴーレンとゼックはどう出てくるとおもうか。こちらが優勝できる確率はどれだけか。
こちらは優勝の確率を最大にしたい。両チームがそれぞれの出方をした場合のこちらの優勝確率は、以下のとおりである。{こちらのチーム(7ノー・トランプ)で、ゴーレンとゼック(7ノー・トランプ)の場合は0.75}、{こちらのチーム(7ノー・トランプ)で、ゴーレンとゼック(6ノー・トランプ)の場合は0.5}、{こちらのチーム(6ノー・トランプ)で、ゴーレンとゼック(7ノー・トランプ)の場合は0.5}、{こちらのチーム(6ノー・トランプ)で、ゴーレンとゼック(6ノー・トランプ)の場合は1.0}。
つまり、両チームが7ノー・トランプに賭けたときには、こちらが失敗し、相手が成功した場合(確率1/4)以外は、こちらが優勝する。だから優勝確率は3/4だ。こちらだけが7ノート・トランプのときには、こちらが成功すれば優勝だが、失敗すれば優勝を逃すので優勝確率は50%だ。こちらが6を賭け、相手が7を賭けたときには、相手が失敗したときのみこちらの優勝となるからやはり50%である。両チームが6を賭ければこちらが確実に勝つ。
この表(省略)をもとにミックス戦略の均衡点を計算すればよい。ウィリアムズ方式を使えば、7ノー・トランプを2/3、6ノーランプを1/3の割合で賭けるべきであることがわかる。また、比率を縦に比べていき、こちらの優勝する確率はゴーレンとゼックの優勝できない確率と同じであることを考え合わせると、相手は7ノー・トランプを2/3、6ノー・トランプを1/3の割合で賭けてくるであろうと予測できる。こちらが優勝できる確率はいくらか。結論から言うと、この状況では2/3の確率で優勝できる。
例えばこちらが7ノー・トランプを賭けた場合、ゴーレンとゼック側は2/3の確率で7ノー・トランプに賭けてきて、そのときこちらの優勝確率は0.75、また、ゴーレンとゼック側は1/3の確率で6ノー・トランプに賭けてきて、その時の優勝確率は0.5であるので、加重平均すると(2/3)・(0.75)+(1/3)・(0.5)=2/3となる。こちらが6ノー・トランプを賭けた場合も同様の計算で2/3の優勝確率となる。
これとは対照的に、こちらが戦略のミックスを考えずに、常に7ノー・トランプを賭けるとどうなるだろうか。ゴーレンとゼックがこれに気づけば、必ず6ノー・トランプを賭けてきてその結果、こちらの優勝確率は0.5になる。ミックス戦略をとることにより、ライバルにつけ入る隙を与えずにすむのである。