娘たちよ、私たちは今、権力も領土も政もすべて捨てようとしている。お前たちの中で私たちを一番愛しているのはだれだ。だれであろうか。そのものに私たちの最大の贈り物を与えよう。それが自然で、道理にもかなった方法だ(リア王の一節)。リア王はいずれ年老いたときに、子どもたちが孝行してくれるか不安であった。
彼は残念なことに、子供たちが頼みを聞いてくれないかもしれないことをよく知っていた。子供たちが孝行するか否かは、リア王に対する愛情や尊敬に加えて遺産相続の可能性によっても左右される。ここでは相続をどういうルールに従って行えば子供たちが孝行して親を訪問するかを考えてみよう。
親は子供一人一人に、週一回の訪問と週二回の電話を義務づけ、子供たちがこの基準を守らなかったら遺産相続はなし、というルールを作ったとしよう。基準を守った子供は均等に財産の配分を受ける。さて子供たちは、両親が財産を相続させたいことはわかっているとする。だから、結託して訪問の回数を減らすことに同意してしまう。
両親のアドバイザーとして相続のルールを書き直すとすればどうすればよいか。だれも相続しないという選択は両親とも望んでいない。
以前と同様、基準に満たない子供は相続できないようにする。問題は全員が基準以下の時どうすればよいかだ。その時には、最も多く訪問した子供に全財産を与えるようなルールにする。これによって子供たちは多人数版囚人のジレンマの状態になり、訪問を減らす結託策は維持不可能となる。
結託違反の数が少しでも多い者が多額の財産を得る。一回でも電話をすれば、均等相続から100%相続に一気に増加する。結局、子供たちが一人の場合には適用できない。申し訳ないが、一人っ子の両親にはうまい解法がないようだ。