ケース・スタディ{その6 フットボール・シーズン到来}

 

 以前は米国のプロフットボール・リーグには、伝統のある全米フットボールリーグ(NFL)と、それに対抗する合衆国フットボールリーグ(USFL)の二組織があった(現在はNFLのみ存続)。ここでは、USFLが直面した、シーズンを秋にするか春にするかという問題について考えてみよう。秋の方が市場は大きいので、USFLの理想は、秋に独占的にプレーを行い、NFLには春に移ってもらうことである。

 しかし、NFLが秋に残るならISFLは春を独占した方がよい。UFLにとって最悪のシナリオは、両リーグとも春に移ってしまうことだ。NFLは人気の高いリーグだが、それでもできればISFLは圧倒的に人気があり、また、秋のほうが市場がはるかに大きいので、NFLにとっては春を独占するよりは、両リーグが重なっても秋のほうがよい。

 この状況を具体的な数字を当てはめて説明してみよう。フッボールを見る人の数は秋には一億人で春には五千万人としよう。どちらかのリーグしかゲームしない時期にはそのリーグは市場全体を得る。二リーグが同じ季節に重なればNFLが70%、USFLが30%のシェアを得る。今、{ともに秋[UFL(30):NFL(70)]}、{UFL秋:NFL春[(100):50)]}、{UFL春:NFL秋[(50):100)]}、{UFL春:NFL春[15):35)]という}4通りのケースにおいて、NFLとUFLがどれだけの観客を集められるかを示したものである。それぞれの観客数を最大にしようとして行動すると、結局どうなるであろうか。

 

《ケース・ディスカッション》

 UFLには絶対優位の戦略はない。USFLの最善の選択は、NFLのオフ・シーズンにプレーすることだ。しかしながら、これは明らかにNFLの選択に影響を受けている。一方、NFLには絶対優位の戦略がある。つまり、NFLにとっては、USFLの選択とは無関係に秋を選択するほうが優れている。なぜなら、秋のシーズンを選択すれば、7010050を獲得できるが、春を選択すれば5035を上回るからだ。

 この先はどう続くべきだろうか。NFLは絶対優位の戦略である秋を選ぶべきである。そして、USFLはNFLが秋を選ぶことを予測したうえで、春を選択すべきである。この予測は秋と春の市場の大きさの様々な組み合わせに対して有効である。NFLとUSFLが7対3で市場を分けるとするなら、秋の市場の大きさが春の市場の大きさの1.43倍から3.32倍の間のときには同じ予測が成り立つ。この結果からは、USFLが秋のシーズンに移ったことは失敗だったということができる。USFLがなくなってしまった原因の一つかもしれない。