戦略(その4 戦略的な戦略集合の操作)

 

相手の戦略に何があるのかが重要な意味を持つことから、戦略の集合は何であるのかが相手に確定させることも戦略的思考の重要な位置を占めることがわかる。戦略的関係にある相手には、できるだけ自分に有利になる戦略を与えておくべきだし、自分に不利になるような戦略は相手に与えない方が望ましい。例えば、友人と二人で食事をしようということになった場合で考えてみるとよくわかる。

まず、何を食べるかということ決めようということになる。一人が、「何を食べる?」と問いかけると、相手は「何でもいいから、任せるよ」という答えが返ってくる。そこで選択を任せられ方は、自分の好きなウナギを食べようと思って、ウナギ屋さんを探してウナ重を注文し二人で食べる。相手も渋々従ってウナ重を食べはしたものの、本当はウナギが苦手で、焼き肉が食べたかったというようなことはよくある。

こうした場合、選択を任せられた方は、すべての選択を任せられたと思って、ベストの物を選択したわけであるから、食事をした後で相手から、本当はウナギが苦手なんだといわれたりすると、せっかく一生懸命選んだのに、心外だと気分を害してしまう。これは明らかに戦略集合の確定を間違えたことによる結果である。つまり、こうした場合は、「ウナギ以外なら」とか「焼肉系なら何でも」というように戦略集合を確定しておけば、任せられた方はそれを踏まえて選択することになったはずだ。

逆に言うと、この例の場合、最初に食事をしようと言い出した方が、「私はウナギを食べに行きたいと思っているが、あなたはどうする?」と言ってしまえば、相手は「ウナギは嫌だ」答えるか「それでもいいよ」というかしかなくなる。もとっも、「ウナギと焼き肉が食べられる店にいこう」という戦略もあるにはある。しかし、相手が会社の上司だったりすると、選択範囲はごく限られてしまうことになる。

服装のコーディネートをセンスのあるものに改善させようとする女性も多いと思う。うちなんかもご多分に漏れず、私は、スーツ、ネクタイ、ワイシャツ、靴下、靴の色などのコーディネートでしょっちゅう文句を言われた覚えがある。私にしてみれば、芸能人のように、何百着もあるわけではないので、適当に組み合わせて着るのがベストだと思っていたので、それを指摘されるのがとても憂鬱でした。

こうした場合、「スーツとネクタイのバランスはいいね!」とい言われたりすると、今度はもう少しワイシャツにも気を使ってみようという気になる。つまり、私の服装を自分の好みにさせたいのであれば、一度にすべてについて改善を求めるのではなく、戦略の集合(選択肢)を限定して、私が挑戦しようという気にさせるような戦略をとるべきであるということだ。勉強嫌いの子供に勉強させる戦略も同じである。

これを応用したのが、「販売後収益戦略」である。これは、単体では高価なスマホやアイホーンを、手頃な値段で販売し、使用料で収益を上げるという戦略や本来高額であるコピー機を低価格販売あるいはリース契約により幅広く普及させ、一枚印刷するたびにカウンター料などと言う訳の分からない名目で徴収することで収益を上げる。また、リース契約を継続することで、関係性を強める戦略をとる。

  また、われわれがよく経験することであるが、長い行列ができているラーメン店に入りたくなるという習性や混んでいる映画館には、立ち席であることを知りながらついつい引き込まれてはいってしまう。これなども、今買わないと損をしますよ!というメッセージを送ることで、顧客の戦略集合を限定的なものにしているわけだ。すなわち、戦略集合の操作というのは、自分の利得が最大になるように相手の打ち手を誘導することである。