戦略(その2 戦略的思考のプロセス)

 

戦略とは、戦略的環境において、自分の自由意志のもとに取り得る行動を、その将来にわたる予定を含めて記述したものである。したがって、戦略を把握することなしに、戦略的思考は語れない。戦略とはもともと戦争における策略のことであるが、われわれの関心のある戦略的環境での戦略の意味は遥かに広く、意思決定をする主体の利害にかかわるすべての行動も戦略としてとらえられる。

ビジネスの文脈においては、自社製品を販売するにあたり、価格を安くするか、あるいは現状維持か、高めに設定するかなども戦略であり、また、ターゲットを中高年にするか、若者にするか、子供にするか、男性にするか、女性にするかなども一つの戦略である。このように何が戦略になりうるかは、自分は何をしたいかと置かれている状況(戦略環境)によって異なってくるものである。

このように、意思決定をする人の対象と目的によって、またわれわれが戦略的発想で分析する対象になる社会経済的現象によって、どのような戦略を対象にすべきかはおのずと決まってくる。つまり、まず何を知りたいのか、何を分析したいのか、その対象を決めてから、それに関してどのような戦略を考慮すべきかが決まってくることになるわけであり、決して戦略ありきではない。

例えば、米を販売しようとしている小売店は、男性と女性をターゲットして分けも無意味であるが、日本人と外国人に分けて考えるというのは意味がある。しかし、メタボ対策として、男性、女性の特性に合わせて、特殊な栄養素を加えた米を販売するといった場合は別である。つまり、何をやりたいのかによって、戦略的環境のとらえ方やその分析方法も全く違ったものになる。

戦略の分類が決まったとしても、その戦略がどれほど効果的か、あるいは、その戦略が自分にとれるかは別の問題である。そこで、この段階では、まず、とりうる戦略を列記し戦略を正確に把握することであるが、これは思ったよりも難しい。しかし、とりうる戦略のリストを意識することなしには、戦略的思考を開始することはできないから、不完全にしろ、自分のとりうる戦略には何があるかを考える姿勢が大切である。

戦略思考の過程においては、まず、戦略を考えたい範囲を確定することが出発点となる。例えば、新製品の販売という戦略を考える場合には、その新商品とは関係のない、今日の自分の服装についてのプランなどは分けて考えなければならない。戦略の範囲が確定したならば、自分がとりうる戦略、競争相手がとりうる戦略の集合を考え、その戦略の組み合わせにより生じる利害を考える。

さらに、時には、自分が有利になのように、自分及び相手がとりうる行動を操作する必要もある。こうした思考過程を経て戦略が選択されることになるが、現実にはなかなか決断できない場合がある。思い悩んで決断できない人のタイプには2種類あるようだ。一つは、自分のとるべき戦略がいくつかあって、そのどちらが好ましいかわからないため決断ができないというタイプである。

 もう一つは、自分のとりうる戦略の集合、すなわち戦略の選択肢のリストアップができてないタイプである。前者の場合は、戦略的思考の力を強化することで道が開けるが、後者の場合は対策が難しい。自分ではとることができない、自分の選択肢に入らないような戦略を考えているのがまさに悩みの原因であるからだ。自分にできることが何なのかがわからないために損している例は少なくない。