感情に重点を置くコミュニケーションが、企業のあり方を変える

 

本書の詰めくくりに、私(著者)たちみんなが動機づけについてもっとよく知ることで、企業と消費者の関係がどう進化していけるか、その可能性についていくつか予想しておきたい。私たちは今、大きな変化を目の前にしていると思う。それは、革命と言っていいほどの、企業と消費者の関係を根本から変えるような大きな変化だ。

例えば、かつて蒸気エンジンがはじめて大規模な物流を可能にしたように、また、ラジオやテレビ、インターネットという新しいコミュニケーション手段が、もの、サービス、それを消費する人との関係を変革したように、現在の消費者主導の、感情の重要な役割を果たす新しいコミュニケーションは、企業のあり方を変えることになるだろう。

マーケティング・メッセージの重点はこれからますます消費者に感情的な経験を与え、感情的に満足させる結果に集中するようになる。そのためには、そうした感情的なニーズを測定し理解する力、それを育て支える道を切り開く能力を増す必要がある。消費者が製品、サービス、それらが自分の心と生活空間に持ちこむメッセージにますます影響を与えるようになり、製品やサービスの消費がより個人のニーズを満たすようにカスタマイズされるようになるだろう。こうしたすべての変化によって、人々が何をするのか、どんな風にするのか、それをどう感じるかにも大きな変化が起こるだろう。

その兆しとして私(著者)が思い描くものを、いくつか例に挙げておこう。

 

  1. 私たちが毎日の生活で使う製品は、私たちの満足を高めるものにどんどん進化していくだろう。十分と言えるレベルをはるかに超えて、本当に意味のある感情的経験を与えてくれるようになる。

  2. 消費者の声がもっと大きくなり、その声がより大きな影響力を持つようになる。一方的に提供されるもので間に合わせるのではなく、消費者が本当に欲しいと思う製品に手に入れる日はそう遠くはないだろう。

  3. あらゆる種類の製品で、見かけや感触などのデザインに革命的な変化が起こる。これらの変化によって、身近にある製品がより五感を楽しませるものになり、その機能は私たちの内なるニーズをより満たすようになる。

  4. どの企業も消費者と接する時間が増えるだろう。消費者を観察し、その声に耳を傾け、助言を求め、学ぶことになる。これは製品プロセスを自動制御サイクルに変える。そこでは消費者のニーズやウォンツが、直接彼らが使う製品の質の改善に情報を与え、こうした製品が今度は消費者のニーズやウォンツに直接影響を与える。

  5. 消費者の感情的ニーズを満たそうと真剣に努力して学ぶ企業と、動機づけマーケティングの力を受け入れようとしない企業との間の差がどんどん大きくなる。新しい視点を取り入れる企業と、そうしない企業の違いは、この20年の間に出現した情報テクノロジーに適応して取り入れてきた企業と、そうすることに失敗した企業との差と同じくらいの大きさになるだろう。

  6. 最後に、私(著者)の予測では、親愛なる読者の皆さんは、消費者との正直で誠実な感情的結びつきという土台を築くことで、これからますますビジネスを楽しむことができるだろう。