感情の力にアクセスする{その3 マインドサイトⓇによる新しいアプローチ)}

 

私(著者)たちフォーブス・コンサルティング・グループは、感情研究では避けられない大きな壁を乗り越えようと、ここ数年努力を続けてきた。その結果が、マインドサイトと呼ぶ感情研究テクニックである。マインドサイトの基本となる要素は、消費者の感情脳に「絵の形で話しかける」テクニックといえる。このイメージによる会話は、アントニオ・ダマシオらが発表した神経学研究に基づいて、私(著者)たちが独自に開発した「急速提示/急速反応」手法を使っている。

ダヴィッド・ルドロフ(とダマシオら)は、MEG(fMRIに変わるもので、一連の神経の動きを記録するのに適している)を使って、視覚的刺激の処理に関連した脳の活動を追跡した。視覚的イメージの反応として脳内に形成される知覚、感情、志向の発達を記録するという方法だ。ある視覚的イメージが被験者に提示された瞬間から測定を始めると、最初の100ミリ秒(訳注:ミリ秒とは1000分の1秒のこと)ほどの脳の活動は刺激の視覚的な情報処理に費やされる。次のプロセスは感情脳に移行し、そのわずか700から800ミリ秒後には、前頭葉が活性化され、刺激についての合理的思考が始まった合図となる。

ダマシオはこう書いている。『視覚をつかさどる皮質でその刺激に対する処理が始まる瞬間から、被験者が最初に感情的な反応を示す瞬間まで、500ミリ秒近く、つまり2分の1秒がかかった。これは小さな数字なのか、大きな数字なのか? それは見方による。「脳時間」でとらえれば、相当長い時間がかかっている...しかし、「意識的な心の時間」では、それほど長い時間ではない。この時間は、知覚されるパターンを認識するために必要な数百ミリ秒と、ある概念を処理するために必要な700から800ミリ秒の間におさまる』。

この研究に基づいて、私(著者)たちは300から800ミリ秒という時間枠に存在する「感情発見の窓」を思い描いた。消費者が最初に視覚的な刺激を与えられた瞬間から、最初にその刺激に対して意識的に合理的思考を始める瞬間までの時間である。回答者が視覚的イメージを見せられてから、この限られた時間枠の中で見せる反応は、おもに感情脳の活動と結びついているはずだ、と私(著者)たちは推測した。

このデータだけを取り出せば、意識的なコンセプト処理と結びついて生じやすい意図的な編集、自己顕示、全般的な「合理的説明」による歪みをかなり避けられるだろう。マインドサイトはこの急速提示/急速反応のテクニックを使って、消費者の感情脳との「イメージの対話」の窓を開くものだ。このテクニックを使えば、自己申告や、それに含まれる意識的な歪曲という問題は避けられる。同時に、繊細で豊かな感情脳に活動アクセスすることで、一般的な心理学的・神経学的な測定方法だけを使うよりも、幅広い感情を評価できる。

《マインドサイト・イメージライブラリー》

被験者が1秒に満たない「感情発見の窓」の間に見せる感情を測定するには、どんな実験を使えばいいのか。この短い反応時間では、「はい」か「いいえ」のフィードバックを与えるのが精いっぱいだろう。この瞬間に集めるフィードバックに意味を持たせるには、そのイメージがどんな感情を意味するのかを、被験者に見せる前にはっきりさせておく必要があった(「はい/いいえ」の回答で、被験者が受け入れたか拒絶したかがわかる特定の感情状態を示すようにする)。この基準に従って、私(著者)たちはマトリックスの9つの動機づけのどれかを満足させる(あるいは満足させない)ことがわかる、特定の感情と結びつく視覚的イメージのライブラリーを開発した。