動機づけの研究{その1 アリストテレスの四原因説が議論の始まり}

 

これまで、"すべての"消費者行動の原動力となる9つの主要な動機づけが明らかになった。これらの動機づけに基づいたマーケティング戦術のいくつかを、自社のビジネスに今すぐにでも...遅くてもこの本を閉じた瞬間から...取り入れようと思えるように、できるだけわかりやすい形で紹介してきたつもりである。消費者の動機づけについて得た新しい視点が、自社のビジネスに大きな成功をもたらすことを願っている。

しかし、近研究分野への道を切り開いてくれた動機づけ理論の偉大な先人たちについて、少なくとも彼らの研究の成果をまとめることなくこの本を終えるのは、手抜きになってしまうだろう。私(著者)の研究は彼らの努力の上に成り立っているのだから、動機づけの本質についての議論が始まったのは2000年以上前のことだ。

古代ギリシャの偉大な哲学者たちの研究がその始まりとなった。物事がなぜ、どのように起こるかについてプラトン、ソクラテス、アリストテレスの思想が、19世紀に発達した動機づけ理論の基礎となり、現代の理論にも知恵を授け続けている。アリストテレスは特に、原因と結果の関係を追求した。彼が説明している4種類の原因(素材因、形相因、作用因、目的因)のうち、2つの原因が現在の動機づけ理論に影響している。

まず、作用因は人間の行動を、それ以前に何が起こったかという観点から見る。この考え方を現在に応用したものが行動主義と呼ばれているもので、過去の経験による条件づけという観点から現在の行動を説明しようという概念だ。これに対して目的因は、人間の行動をそれがもたらす結果という観点からとらえる。言い換えれば、自分の行動の結果として将来何が起こってほしいか、先に目を向けるということだ。

この後者の概念が、目標に向かって努力するという考えの基礎となり、それが現在の殆どの動機づけの土台となっている。例えば、「ジョンはニュースレターに論説ページを作った。なぜなら彼は自分の組織の代表になりたいからだ」という文章は、この種の目標を見据えた行動(目的因)が、現在の特定の行動を選ぶように背中を"押す"プロセスを表している。

つまり、私たちは自分の将来の目標達成につながるような行動を選択しようとしている。同じように、古代の概念は、動機づけを何かの行動に努力を注ぐように"引っ張る"原動力として理解する基礎にもなっていた。こちらの場合もやはり、私たちは起こってほしい結果に向かって進もうとする。