有名な全国チェーンのステーキハウスが、特別な(つまり尊敬を集める)得意客のための店という評判を高める方法を模索していた。このチェーンビジネス戦略は、企業の重役が顧客や見込み客、販売業者を接待するときに使ってもらうステーキハウスになることを中心にしていた。そのため、ステータスを重視するこれらの企業の重役たちが、接待場所の選択でライバル会社と差別化を図るためにはどうしたらいいのかを知りたがっている、ということも理解していた。
著者たちの動機づけ分析で、こうした特別なディナーの席に顧客を招いて接客する側は、相手の称賛を得たいという気持ちが強いことがわかった。彼らはレスランに対して、自分たちが本当にステータスの高い客として扱われていると感じるサービスを望んでいた。そうすれば接待した相手からの評価もたかまるからだ。レストランの経営陣は、尊重に集中したサービス戦略...高級レストランで食事ができる特権と、特別なもてなしを経験してもらうこと...が、得意客の信頼を得るだけでなく、彼らの顧客を通してさらに好ましい口コミが広まると理解した。
著者たちはこのレスランと協力して、「今日のVIP」と呼ばれる高級サービスプログラムを考案した。そのプログラムでは、ステーキハウスで接待する企業幹部は、食事に関して細かい要望をリクエストできる。席順やサービスの詳細(給仕が客を名前で呼ぶなど)、メニューの選択などだ。接待側のVIPは、店ではいつでも温かく迎えられ、歓迎され、支配人や給仕たち全員によく覚えられている。このプログラムをいくつかの店舗で試してみたところ、大きな成功を収めた。レストランチェーンの経営陣は、動揺のもてなしプログラムを全国的に広めることを計画している。
《ホームインテリア...社会的責任を感じられるデザイン》
インテリアを手掛ける著者たちのクライアントは、高所得層の顧客が自宅用のインテリアを探すときに、本当のところ何を求めているのかを理解しようとしていた。彼らは欲しいものはほとんど何でも買える。そのため、クライアントがこの市場で成功するためには、上質のホームインテリア製品を提供する数ある企業の中で差別化を図ることが不可欠だった。
動機づけ分析をしたところ、ターゲットとなるホームオーナーたちは社会的責任が感じられるデザインに強い関心を見せた。第三世界やその他の貧しい地域で造られた、世界に1つしかない製品などだ。このようなインテリアを選択する女性客は、教養があり成功しているだけでなく、それと同時に世界のために活動する立派な舵取り役という印象を与える。
貧しい国の人々の生活向上に役立つ選択をする、前向きな考えの持ち主という印象だ。つまり、彼女たちは人から尊重されるにふさわしいインテリアの選択をすることになる。クライアントのマーケティングチームは、社会的責任を果たすことにつながるインテリア製品で、デザインが面白く「社会的に進化した」ものは、ちまたの高級インテリアショップの製品とは一線を画すことに気がついた。このアプローチをうまく使うことで、つねに時代遅れになるリスクを抱えた「上流階級にふさわしい必需品」を探すという、終わりのない仕事から解放される可能性が開けた。
《ワクチン...予想外の動機づけが熱心な推進者を生んでいた》
医師たちのところに定期的に売り込みに行っているマーケターなら誰もが知っていることだが、彼らへのマーケティングは本当に大変だ。いつも忙しいうえに、あちこちのマーケターから声をかけられ、製薬会社が強調する製品の約束の殆どに関心を示さない。著者たちのクライアントは大手製造会社で、マーケティング担当者たちはワクチンの大部分が、その使用に熱心な少数の医師たちの手に渡るとわかっていた。
クライアントはこれらの医師たちがワクチンに熱心になる理由をもっと理解したがっていた。このクライアントのために実施した著者たちの動機づけ調査で、1つの仮説が証明され、2つの大きな驚きを生み出した。ワクチンを大量購入するユーザーグループの1つが、ワクチン接種を自分の患者を守り、思いやる方法の1つに見ていることについては驚かなかった。つまり、彼らは世話の動機づけに駆り立てられて行動していた。
しかし、ほかの2つのグループは、予想外の動機づけを得てワクチンの熱心な推進者になっていた。最初の以外なグループは、ワクチンを自分のビジネスにとって利益を上げる非常に効率的な手段とみなしていた。医師たちは公共善のために無私無欲で奉仕しているという自己イメージを示したがるのが普通だから、いくぶん驚かされる動機づけだ。このグループは達成の動機づけに関して非常に高いスコアをつけた。
第二の予想外のグループは、ワクチン接種をおもに医学界の仲間たちによい手本を示す手段としてとらえていた。この最後のグループにとって、ワクチンは重要な公衆衛生上の問題で、接種率の低さを改善しなければならないと感じていた。このタイプの医師たちは製薬業界の研究者たちがKOL(キー・オピニオン・リーダー)とみなすグループに属する。公衆衛生の責任者としてワクチン接種の促進を先導しようという彼らの意欲は、自分が示す例によって他者からの尊敬と称賛を得たいという欲求のように見えた(高次の尊敬欲求)。
著者たちは、これらの3つの異なる動機づけグループに分かれる医師たちは、属する医療分野もそれぞれ異なることに気がついた(おそらく医師たちの人格や目的によって魅力を感じる医療分野が異なるのだろう)。このリサーチ結果として、クライアントは、医師たちのワクチンについて話し合うときのアプローチを3種類用意し、異なる動機づけが働いていると思われる医療分野ごとに変えることにした。この戦術のお陰で、クライアントは医療現場別にワクチンについて医師たちを説得する最善のアプローチを採用することができた。
この選別戦術は大きな成功を収めた。