社会的競争という形で低次の尊重を求めている消費者へのマーケティングは、「この機器がどんなに素晴らしいか、見てください」という従来型のマーケティング・アプローチと区別するのは難しい。つまり、その製品が非常に優れているという甘い宣伝文句と、「これを持てば近所の人から羨望の目で見られます」という暗黙の(あるいは明言された)約束を組み合わせれば、他者からの注目や羨望という形で尊敬を得たい消費者の心をつかむことができる。
製品広告にセレブを登用すれば、低次の尊敬を求める消費者へのアピールを高められるだろう。ブランドの顔になる人たちが、その製品が望ましいという確約を与えてくれるからだ。ジェニファー・ロペスの香水や、ジェシカ・シンプソンのブランドの洋服を身に着けることで、本当に消費者はスターと同じようになるのだろうか? おそらくそれは無理だろうが、こうした製品の広告は、ジェニファー・ロペスに対して人々が持つイメージが、彼女の香水を使っている別の女性への見方にも反映されるとほのめかしている。
同じように、NBAのスーパースター、レブロン・ジェームズの背番号が入ったジャージを着ても、それでバスケットボールがうまくなるわけではないが、体育館のフロアではほんの少しだけスターになった気分を味わうことはできる。賞をとった製品であることを大げさに宣伝したり、消費者の98%が支持していると強調することも、その製品は誰もが欲しがるのであるというイメージを高める。尊重の動機づけに対するこの種のマーケティングは、ターゲット市場でステータスシンボルとしての価値を持つような製品の場合に最も適している。ペーパータオルやごみ袋は、この種のマーケティングには適さない。
高次の尊重を求める消費者へのマーケティングは、その製品が消費者の自己イメージを反映する、あるいは向上させる製品であることを約束するか、ほのめかすのがいい。他者から尊敬され称賛されるような価値観と態度を持つ人物というイメージだ。この種のマーケティングが最もよく見られるのは、非営利団体の広告だろう。こうした団体の広告は、恵まれない人たちのために正しいことをしたい、人を思いやり、利己心を捨て、寛大な行動のよい手本を示したいという欲求に直接働きかける。
乳がん撲滅のピンクリボン運動が、コーズマーケティングとして成功したのは、このキャンペーンを主流製品と結びつけ、それを買う消費者は正しいことをしているというイメージを強調したからだ。近年では社会的責任がますます注目されるテーマとなってきたため、製品の選択を通して尊敬や称賛を得ようとする人たちへのマーケティングの機会が増している。
もしある製品を選んだことが、人から称賛されるライフスタイルや価値観にふさわしい行動になるのなら(環境に優しいホームケア製品、ハイブリットカーなど)、あるいは限りある資源の保護に役立つのであれば(リサイクル、自転車での移動など)、尊重が得られることを強調するマーケティング・メッセージに集中することで効果が期待されるだろう。
「購入することで誰かの役に立つ」製品も、消費者の尊重欲求を刺激することができる。最近のマーケティング・アプローチの例といては、トムス(Toms)のシューズや、2ディグリーズ・フードのものがある。後者は1982年に販売開始された、ポール・ニューマンの「ニューマンズ・オウン」食品から発展したブランドだ。
《2つの動機づけに合わせたマーケティング・メッセージ》
尊重の動機づけは低次と高次の尊重という2つの形で現れるため、この動機づけにむけたマーケティング・メッセージも、2つの形をとらなければならない。低次の尊重を求める消費者へのマーケティング戦略で、効果がありそうなアイデアとしては、次のようなものがある。
・あなたはここまで到達しました。
・友達を羨ましがらせましょう。
・あなたがこれを持っているのを見たときの、ほかの人たちの顔を想像してみてください。
・とびきり魅力的に見えますよ。
・これを品質の良さを分かっているお客様のための製品です。
・誰にでも手に入るものではありません。でもあなたならできる。
・実際に目にすれば、質の良さがわかります。
・「あなたのロールモデルのセレブ」にぴったりなものは、あなたにもぴったりです。
・誰がボスか、みんなにみせてやりましょう。
高次の尊重を求める消費者に向けたマーケティング・メッセージとしては、次のようなものが効果的だろう。
・良い手本を示してください。
・あなたは誇らしく感じる権利があります。
・なぜなら、それが正しいことだからです。
・人生にはおもちゃより大切なものがあります。
・私たちはあなたを信じます。あなたはいつも正しいことをしていますから。
・あなたの優れた意見が、何より大切です。
・みんながあなたを尊敬するのも当然です。
・あなたのビジョン...誰もが従うべきです。
・あなたの信念に賛辞を送ります。