何が消費者の心を動かしているのか

 

何が消費者の心を深く動かしているのかを理解することがこれまで以上に重要になってくる。もっとも、AIの社会的実用化が進むと、企業が消費者をプロファイリングすることが可能になり、ビッグデータを解析することで逆提案が可能なので、消費者の動機自体を追及する必要は薄れてくるという説を唱える人が出てきても不思議ではないかもしれない。

 そうなれば、明らかに人間はAIに支配されてしまい、人の尊厳は大きく損なわれてしまう。消費者の人生観やライフスタイルが変化するのは、社会的な環境変化により促されるという側面は確かにある。しかし、人間は道具を支配するからこそ、製品やサービスを買う方法や市場も変化するのであり、市場が変化するから製品やサービスを買うのではない。

したがって、マーケターは消費者について知り、働きかける方法も変化を求められる。この流は変わることはないだろう。この本の著者ディヴィド・フォーブスも、ここを起点に消費者が内に抱えている不満や期待を理解し、消費者にアピールする製品やメッセージを送り届けない限り、マーケターとして成功をつかむことはできないだろうと述べている。 

その大きな挑戦の中心にあるのが、消費者の「感情的動機づけ」であると位置づけ、消費者の心の奥深くにある感情的ニーズを探っていく最善の方法を学ぶため、新しいリサーチを通して、入手した情報を解読するアプローチが必要でとなってくる。新しい市場では、消費者を行動に駆り立てている「感情の力」に焦点を当てなければならないわけである。

 ところで、「動機づけ(モチベーション)」はあらゆる状況で働いているが、動機づけには様々な「フレーバー」がある。したがって、消費者が商品を購入する際には、必ずしも、その消費に対する嗜好や愛着がストレートに働いているとは限らない。場合によっては、購入したくないのに買わざるを得ないといった感情的動機か働いているのかもしれない。

 この複雑な動機づけを「内発的動機づけ(自分自身)」「道具的動機づけ(物質世界)」「対人的動機づけ(社会的世界)」という3つの次元と「過去(結果)」「現在(経験)」「将来(期待)」というステージを組み合わせて、人の心を動かす主要な「9つの動機づけ」として明示し、この動機づけを理解することで、マーケティング目標達成の可能性を説いている。