本稿のテーマは、マーケティング・コンサルタント会社フォーブス・コンサルティングの設立者であるディヴィド・フォーブスの著書「マインドサイト・マトリックス(ダイレクト出版株式会社)」を基にして、マーケティングにおける「動機づけ」の位置づけを掘り下げようと試みたもので、長年追求してきた永遠のテーマに相応しいと思ったからである。
1960年代に、広告業界の巨人ディヴィド・オグルヴィは、「消費者はなぜ彼らがしている行動をするのだろう? 消費者の選択の背景にはいったい何があるのだろうか? 何が消費者を動かし、何が彼らを喜ばせるのだろうか? 消費者は何が好きなのだろうか?」と嘆いたという。広告業に携わるオグルヴィに限らず誰もが抱えている疑問である。
そして、この疑問に対する答えは未だに解明されていない。そのため、これを解明するためのチャレンジは今も続いている。にもかかわらず、多くのマーケターは、あたかも消費者の心理を知り尽くし、消費者の動機を先取りしているかのような広告を打ち、市場の開拓やシェア獲得にしのぎを削っているが、費用対効果の面からいっても不十分過ぎる。
しかし、それは、消費者の意見を尊重していないからでもなく、消費者のことなら何でも解っているという幻想にとらわれているからでもない。それどころか、コンセプトの開発から使用・消費されるまで、製品ライフサイクルの全ての段階で、企業は消費者のことを考え、消費者の気持ちを動かそうとあらゆる手段を使い理解しようと時間をかけてきた。
それにもかかわらず、オグルヴィと同じ悩みを抱えている本当の理由は、「消費者を理解するために必要なツールをまだ見つけていないからだ」と、この本の著者ディヴィド・フォーブスは指摘している。おまけに、社会のテクノロジーの変化によって「消費する」という言葉の意味が変わってしまったため、マーケティグやリサーチの性格も変わってしまった。
すなわち、消費者はいつもいたはずの場所から姿を消してしまい、何時もしていたことをしなくなり、いつも買っていたものを買わなくなってしまった。メディアの利用場所、製品開発、メッセージの交換し方、大衆文化そのものに吹き荒れる変化の嵐は、ほとんど革命と言っていいほどの激しさで、消費のプロセスも1960代とはかけ離れてしまった。