(1) 事業年度の確定
会社の事業年度は、定款に定められている会計期間によっていたが、事業年度の途中で解散の決議を行った場合には、その解散の日を境に、その翌日から1年ごとの事業年度が始まることになる。これをみなし事業年度という。
1) 解散事業年度
その事業年度開始の日から、解散日までの期間を解散事業年度と言い、営業が継続している事業年度であるため、通常事業年度の所得計算を行う。
2) 清算中の各事業年度
清算の翌日から1年ごとの事業年度を清算中の各事業年度という。これは残余財産が確定するまで継続する。
3) 残余財産確定事業年度
清算人が残余財産を確定した場合には、その残余財産の確定の日までが残余財産確定年度となる。
(2) 所得の把握
平成22年度の税制改正により、生産所得課税は廃止され、継続企業と同様に益金の額から損金の額を控除して所得金額を計算する損益法により所得計算することになった。
1) 解散事業年度
解散の日までの事業年度には、通常の営業活動を行っていた機関が含まれるため、通常の事業年度と同じく、売上高から売上原価や販売費及び一般管理費等を控除するいわゆる損益法により所得を計算する。この場合には、解散の日まで勤めてくれた従業員に対する退職金を解散の決議の中で定めれば、実際の支給が解散の日まで行われなくても、損金に算入することが可能となる。この退職金の損金算入によって損失が生じた場合には、青色申告書を提出する法人であれば欠損金の繰越還付の適用を受けることができる。
2) 清算中の各事業年度及び残余財産確定年度
これまでの各事業年度の確定申告と同様に、益金の額から損金の額を控除して所得を計算する。また、残余財産がないと見込まれる場合には期限切れ欠損金参入が認められることとなるため、債務の一部弁済や、免除の放棄について注意が必要となる。
3) 平成22年9月30日以前の解散の場合
平成22年9月30日以前に解散した法人については、清算確定申告に係る所得の計算は、いわゆる財産法によって行われる。この財産法は、解散時点からの純資産の増加額に着目して所得の金額を求める。これは、解散時に会社の所有する財産を換金処分することによって、財産の含み損益が実現するものである。この含み益の実現によって増加した純資産は未だ課税されていないため、その増加した部分を課税所得として計算する。
※ 清算所得の金額=残余財産の価額-解散時における株主資本等の金額(資本金の額+利益積立金等)
例えば、3月決算の法人が、平成26年10月31日に臨時株主総会を開催して、解散を決議した。その後、平成28年1月31日には残余財産が確定する見込みである。この場合の計算期間は、1)解散事業年度:平成26年4月1日から平成26年10月31日まで、2)清算中各事業年度:平成26年11月1日から平成27年10月31日まで、3)残余財産確定事業年度:平成27年11月1日から平成28年1月31日まで、となる。