清算事務を行う(その3 清算の結了)

 

(1) 決算報告書の作成

 会社は清算手続きの場合でも、清算事務年度ごとに決算書類を作成する必要がある。この場合の計算期間は、清算会社の場合では、解散の日の翌日から1年ごとに1事業年度として、各事業年度に係る貸借対照表及び事業報告書並びに付属明細書を作成することになる(会社法494-1)。この貸借対照表を作成した時からその本店の所在地における清算結了の登記の時までの間、その貸借対照表及び付属明細書を保存することになる(会社法494-3)。

1) 事業報告書

 事業報告書には、清算事務の状況に係る重要な事項が記載されなければならない(会社法147-1)とされているが、具体的な項目については定められていない。したがって、その記載内容については清算人の判断で作成することになるが、事業報告書の性質からすると、以下の事項を記載することになると考えられる。

) 当事業年度の収支状況

) 清算事務の今後の見通し

) その他、臨時株主総会の開催等の事項

2) 損益計算書及び株主資本等変動計算書

 会社法494条1項には、清算株式会社は貸借対照表と事務報告並びに付属明細書を作成しなければならないとあるが、損益計算書及び株主資本等変動計算書については作成が求められていない。これは、次のような流によるものと考えられる。

) 損益計算書:継続企業を前提に作成されるものであり、清算中の会社には不要であるため。

)  株主資本等変動計算書:清算中の会社には剰余金の配当や、資本金等に変動が起こりえないため。

 清算会社が税務申告を行う場合の確定申告には、貸借対照表、損益計算書及び勘定科目内訳明細書の添付が必要であり、また株主資本等変動計算書も添付することとなる。会社法上では作成が求められていない損益計算書と株主資本等変動計算書も、税務上は提出が必要とされる書類となるため、実際には作成をすることが必要となる。

(2) 株主総会の承認

 清算中の会社でも、株主総会を開催して作成された貸借対照表や事務報告、付属明細書等の承認を受ける必要がある(会社法507-1,2)。この場合の株主総会の招集通知等の手続は、解散前の事業年度の株主総会となんらかわるところがないため注意しなければならない。

(3) 清算結了の登記

 清算事務が終了し、決算報告書について株主総会の承認を経た場合には、2週間以内に本店所在地の法務局に清算結了の登記を申請する必要がある(会社法929-1)。税務では、この清算結了の日から1ヵ月以内に清算確定申告を行うこととなっているが、その残余財産の最後の分配をこの1ヵ月以内に行う場合には、清算確定申告の提出期限は、その残余財産の配分の日の前日までとなっている(法人税法74-2)。

 なお、清算人は、清算株式会社の本店の所在地における清算結了の登記のときから10年間、清算株式会社の帳簿並びにその事業及び清算に関する重要な資料(帳簿類等)を保存しなければならない(会社法508)。しかし、清算結了後には、会社の本店所在地には会社は存在しなくなるので、実際には清算人が責任をもって自宅(自宅倉庫)にこの帳簿を保存することが必要になる。