清算事務を行う(その2 残余財産の分配)

 

(1) 債権の取立て

 清算人は、解散前に保有していた在庫・固定資産の売却や処分を行い、会社の保有財産を現金化する。具体的には、ァ)売掛金は回収する、ィ)在庫・固定資産は売却及び処分(土地や建物等の売却可能なものは売却し、売却できないものは処分)、ゥ)有価証券も売却、ェ)保証金等は、契約を解除し、返還をうけることができる保証金等の返還を求める。

(2) 債務弁済

 清算人は事業を行う上での様々な契約を解除し、債務の弁済を行う。この債務には、仕入に係る債務、借入金、リース契約等の解約金、税金等がある。ただし、この債務弁済は、一部の債権者のみを優遇して行うと弁済を受けられない債権者が生じてしまう可能性がある。そこで債権の申出期間内には債務弁済が認められないこととなっている(会社法500-1)。

 知られている債権者に個別催告書を送付したものは、原則、債権の申出期間内に債務の弁済はできないが、裁判所の許可を得て、少額の債権について、弁済しても他の債権者を害するおそれがない債権に係る債務については、その債務の弁済をすることができる(会社法500-2)。

(3) 株主への配当

 清算人は、債務を弁済し、残余財産が確定した後は、株主に対して残余財産を分配することができる(会社法500-2)。しかし、この債務の存在の検証や金額の確定まで長期にわたるような場合には、残余財産の確定が遅れ、結果的には株主への分配にも時間を要することになる。

 そこで、債務の弁済に必要な財産を留保した上で、残余財産を株主に分配することができる(会社法502)。平成22年9月30日以前の解散の場合には「残余財産分配予納申告書」が必要だったが、現在は不要となっている。

 なお、株主への残余財産の分配で出資額を超えて分配する場合には、その超える部分が配当とみなされるため、源泉徴収が必要となる。この場合の税率は20.42%となる(所得税法182二、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法28-231-1,2)。