清算事務を行う(その1 財産目録等の作成)

 

(1) 債権申出及び催告

 会社の解散決議を行った場合には、清算人は、債権者に対して一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知られている債権者(その清算会社が帳簿等の記録によって債権者として把握できている者)には、個別にこれを催告しなければならない。この一定の期間は、2ヵ月を下回ることはできない(会社法499-1)。また、この公告には、債権者がその期間内に申出をしないときは清算から除外される旨を付記することが必要となる(会社法499-2)。

1) 官報への公告

 清算人が債権者に対して行う解散公告を官報で行うためには広告日の2ないし3週間前に掲載の予約が必要となるため、事前の準備が必要である。この債権申出期間中に申し出なかった債権者は清算手続きから除外されることになり、分配されない残余財産がある場合は、それに対して支払請求することができるが、残余財産の分配が完了してしまっている場合は、全く分配を受けることができなくなる。

2) 知れている債権者への個別催告

 清算人は、会社の帳簿等から把握できている債権者に対しては、個別に催告をする必要がある。この知れている債権者については、債権申出期間内に申出がなかった場合でも、清算から除外されることはない。

(2) 財産調査

 清算人の業務は、保有する財産を調査し、保有する財産の換価処分を行い、確定した債務の弁済を行い、最終的に株主への残余財産の分配を行うことである。そこで、まずは解散日における財産調査を行い、財産目録を作成する。その財産目録に基づき、清算開始時の貸借対照表を作成する。

1) 財産目録

 解散日における財産調査に基づく財産目録を作成する。この財産目録は事業の清算を目的とした処分価格で作成(会社法144-2)し、資産・負債・正味財産の区分に分け、その内容を示すのに適当な項目に細分して表示する(会社法144-3)。このときに、資産は処分可能価格から処分費用を控除して記載し、債務については、債権届出等によって確定した価格で評価し、リース契約等で契約解除等に伴う一時金が発生する場合には、この一時金を未払い金として計上する。

2) 貸借対照表

 清算開始日における貸借対照表は、解散日における財産目録に基づいて作成する。この貸借対照表は資産・負債・純資産に区分して、その内容を示すのに適当な項目に細分して記載する(会社法145-3)。このとき、資産をさらに流動資産・固定資産等に、負債を流動負債・固定負債等のように区分する必要はない。資産について、処分価格を付すことが困難な資産がある場合には、その資産の財産評価方法を記載する必要がある(会社法145-4)。

 会社所有の土地の中には、換価処分までに時間を要するものがあり、清算の妨げになるものもある。看過できない場合には、代表者が時価で買い取る必要が出てくる場合もある。

(3) 株主総会の承認

 清算人が作成した、財産目録と清算開始時の貸借対照表は株主総会で承認を受ける必要がある。この場合の株主総会は普通決議での承認となる(会社法492-3)。旧商法のもとではこの株主総会で承認された財産目録並びに貸借対照表を裁判所に提出する必要があった(旧商法419)が、会社法では提出の必要はなくなった。

 なお、ここでいう財産目録は、その解散日における貸借対照表をもとに、各項目を処分価格に修正して作成したもので、継続企業を前提とした通常の事業年度と同じように行う

が、通常の事業年度と異なるのは、その事業の開始日から解散日まで(解散事業年度)である点である。したがって、この期間の税務申告が必要ということになる。