自主解散(その2 解散決議・清算人の就任)

 

(1) 株主総会決議

 定款で会社の存続期間や解散事由が定められている場合には、その期間満了や解散事由に至ったときに解散するということになる。しかしながら多くの場合は株主総会での解散決議によって解散することになる。この解散決議は定時株主総会でも臨時株主総会でも可能であるが、特別決議(会社法309-2十)が必要である。この特別決議とは、株主総会において議決権を行使することができる株主の、議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席した株主の議決権の3分の2以上の多数によって行われる決議である。

1) 株主総会の招集通知

 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の2週間前までに、株主に対してその通知を発する必要がある(会社法299-1)。この招集通知は原則として書面で行い、株主総会の日時及び場所・目的等を合わせて通知する必要がある(会社法298-1)。この株主総会の招集通知については、非公開会社にあっては1週間、また取締役会の設置のない非公開会社では定款の定めによって更に短い期間の前までに発送すればよいことになっている(会社法299-1かっこ書)。

 この書面による株主総会の招集通知は、株主全員の同意があるときは、召集の手続きを経ることなく開催することができるため(会社法300)株主全員の出席による総会であれば、召集通知の発想が不要ということになる。

2) 定款変更の準備

 株式会社の解散により、従来の定款から清算会社の定款に変更する必要がある。これは、解散前の機関を引き継ぐのではなく、新たに清算人という機関を置くことになるための変更である。定款には商号や目的、機関・事業年度等が定められている。この機関を従来の取締役及び取締役会から清算人及び清算人会に変更する必要があるためである。また、事業年度は解散決議により、その解散決議の翌日から1年という清算事務年度(会社法494-1)に変更になる。

 目的については、従来の目的を「当社は、会社法第2編第9章の定めるところにより清算することを目的とする」と変更する必要があるとする考え方もあるが、解散の決議を行えば、自動的にその会社の目的が清算することになるため、変更する必要がないという考え方が主流で、目的の変更は必要ないと考えられる。

 この目的変更については、解散後最初の清算人の就任登記をする際に、定款に添付する必要があるため、会社の実態に合わせた目的への変更が必要であると考えられているからである。しかし、この添付は清算人会の設置会社であるかどうかの確認をするための添付のため、目的変更は必要ないと考えられる。

(2) 解散・清算人の登記

 解散の日より2週間以内に解散の登記よび清算人の登記を、本店所在地の管轄法務局に行う(会社法926928)。

1) 解散日

 定款の定めによらず、株主総会の決議による解散の場合には、株主総会の決議があった日が解散日となる(会社法14-1)。税務では、その事業年度の開始日よりこの解散日までを解散事業年度として、法人税や消費税の申告を行う必要がある(法人税法14-1)。

2) 清算人清算人会

 清算人は会社の清算事務を行うものであるが、旧商法のもとでは清算人会の設置が強制されていた。しかし、解散による清算業務を簡易に遂行するために、清算開始前に定款で取締役会が設置されている会社でも、清算人のみで、清算人会を設置しないことも認められている(会社法477-6)。しかし、監査役会を置く旨の定款の定めのある株式会社は、清算人会を置かなければならない(会社法477-3)。

 ≪株主総会の招集から登記までの流れ≫

) 株主総会の招集の決定(会社法298-4)・招集通知の発送(会社法299):{a 招集の決定は、取締役会がある場合には取締役会決議による(取締役会議事録)、b 招集通知は株主総会の日の2週間前までに発送する}⇒株主総会での解散決議(株主総会議事録)(会社法471-3):{特別決議による(議決権の過半数の3分の2以上の多数で決議)}⇒株主への通知(解散通知書):{遅滞なく}⇒法務局への登記申請(解散及び清算人登記申請書)(会社法926928):{株主総会終了後、2週間以内}

3) 税務署等への届出

 解散及び清算人の登記後に遅滞なく、税務署等に届出することが必要である(法人税法15)。

4) 解散決議後の売り上げ

 解散決議によって会社は所有する資産の売却及び換価作業に入るため、原則として通常の営業活動に伴う売上高が計上されることはないと考えられる。売上が計上される場合としては、決議前の仕入で在庫になってしまったものの売却及び、もともとの契約による納品日が解散決議よりあとにあるもののみと考えられる。