会社分割を行う(その3 会社分割後の対応)

 

(1) 登記手続

 吸収分割の場合は、吸収分割承継会社と吸収分割会社は、分割の効力発生日から2週間以内にそれぞれ変更登記をしなければならない(会社法923)。新設分割の場合は、全ての手続が終了した日から2週間以内に、新設分割設立会社については接結の登記が、新設分割会社については変更登記が必要となる(会社法924)。

(2) 事後開示手続

 吸収分割承継会社と吸収分割会社(新設分割会社と新設分割設立会社)は、株主の分割が公正かどうか等の判断や、債権者が異議を述べるか判断するため、吸収分割の効力発生日(新設分割設立会社の成立の日)から6週間、吸収分割(新設分割)の内容等を記載した書面等を本店に備え置かなければならない(会社法791-2794-1811-2803-1)。

(3) 分割無効の訴え

 会社分割の効力発生の日から6ヵ月以内に無効の訴えを起こすことができる(会社法828-1九・十)。無効の訴えをできる者は、会社の分割当時、株主であった者、又は会社分割について承認しない債権者等である(会社法828-2九・十)。無効の判決により、分割に割り当てた株式は無効になり、分割前の会社が復活し、分割前に存在している権利義務はそれぞれの会社に帰属し、分割後生じた債務は、連帯して弁済の義務が生じ(会社法843-1)、債権については共有となる(会社法843-3)。これらの負担額及び持分は、当事者間の協議により定められ(会社法845-3)、協議が調わなかった場合には、裁判所が、申立てにより分割時の財産等を斟酌して決定する(会社法843-4)。

(4) 会社分割と事業承継税制

 事業承継税制とは、認定を受けた非上場株式を後継者が贈与又は相続、遺贈により取得した場合には、一定の割合に達するまでその非上場の株式の贈与税又は相続税の納税を猶予及び免除する制度である(租税特別措置法70の7・70の7の2)。納税猶予の免除がされる前に、猶予期限確定事由が生じた場合には、猶予税額の全部又は一部を納付する必要がある。

 分割型分割による場合には、その分割により分割法人の価値が下落する譲渡対価として分割承継法人の株式を取得したこととなるため、猶予の期間確定事由となる。分社型分割は、その分割により分割法人の株式について移動がないので猶予期限確定事由にならず、納税猶予は継続される。

1) 承継期間中の分割

 分割法人が、経営相続(贈与)承継期間中に会社を分割した場合(吸収分割承継法人の株式等を配当財産とする剰余金の分配があった場合に限る)には、その効力が生じた日から2ヵ月を経過する日をもって猶予された納税金額を治める必要がある(租税特別措置法70の7-470の7の2-370の7--3)。

2) 承継期間末日後の分割

 分割法人が、経営相続(贈与)承継期間中の末日後に分割型分割を行った場合には、その猶予税額のうち、その分割に際して分割対価として配当された分割承継法人の株価の価額に対応する部分に相当する猶予税額について、効力の生じた日から2ヵ月を経過する日をもって猶予される納税額を納める必要がある(租税特別措置法70の7-6五・70の7の2-5五・70の7の4-3)。