(1) 合併契約の締結
会社が他の会社と合併する場合には、合併する会社は、合併契約を締結しなければならない(会社法748)。会社法上で合併により合併契約書に記載しなければならない項目は、次のとおりである(会社法794-1)。
1) 存続会社及び消滅会社の商号及び住所
2) 消滅会社の株主への交付金銭や株式等(交付金銭等)の算定方法並びに合併存続会社の資本金及び準備金に関する事項
3) 消滅会社の株主に対する交付金金銭等の割当に関する事項
4) 消滅会社が新株予約権を発行している場合、存続会社が新株予約権者に対して交付する存続会社の新株予約権又は金銭に関する事項
5) 消滅会社の新株予約権者に対する新株予約権や金銭の割当てに関する事項
6) 吸収合併の効力発生日
また、会社法に置いて記載が任意となっている合併に伴う定款変更や会社財産の引継ぎ事項などを、必要に応じて契約書に記載する。
(2) 事前開示手続
存続会社及び消滅会社は、吸収合併契約書備置開始日から効力発生日以降6ヵ月間(消滅会社の場合効力発生日までの間)、合併の契約内容、金銭等の割当てをする場合の相当性に関する事項、消滅会社の最終年度の計算書類などを記載した書面や電磁的記録を本店に備え置かなければならない(会社法794-1・782-2)。
吸収合併契約書備置開始日とは次のいずれか早い日をいう(会社法794-2・782-2)。
1) 合併契約等について株主総会の承認を受けなければならない場合には、株主総会日の2週間前の日
2) 反対株主の株式買取請求の規定(会社法785-3・797-3)による通知を受けるべき株主がいる場合は、株主に合併する旨の通知日又は公告の日のいずれか早い日
3) 新株予約権買取請求(会社法787-3)による通知の日又は公告の日のいずれか早い日
4) 債権者保護手続の規定(会社法789・799)による公告の日又は催告の日のいずれか早い日
(3) 株主総会の承認
存続会社や消滅会社は、合併の効力発生日の前日までに株主総会の承認を受けなければならない(会社法795-1・783-1)。この場合の決議は、原則として特別決議となる(会社法309-2十二)。ただし、次の場合は、株主総会の決議は必要ない。
1) 存続会社及び消滅会社ともに決議が必要ない場合(略式吸収合併)
消滅会社が存続する会社の特別支配会社である場合は、手続きの簡素化という観点から株主総会の決議は必要とされない(会社法796-1・784-1)。ただし、以下の場合は、たとえ消滅会社が存続会社の特別支配会社であっても株主総会の特別決議が必要である。
ァ) 消滅会社の株主に交付する株式が、譲渡による取得について会社の承認が必要な譲渡制限株式(会社法108-1四)で、存続会社が公開会社(譲渡承認の必要ない会社)でな いい場合(会社法 108-1ただし書き)
ィ) 消滅会社の株主に交付する株式が譲渡制限株式で、消滅会社が公開会社であり、種類株式発行会社でない場合(会社法784-1たたじ書)。
吸収合併が法令や定款に違反する場合や、略式吸収合併契約等の場合にその合併契約等が存続会社や消滅会社の財産等に照らして著しく不当なため、存続会社の株主や消滅会社の株主が著しい不利益を受ける虞がある場合は、存続会社の株主や消滅会社の株主は、それぞれ株式を保有する会社に対し、吸収合併の差止めを請求することができる(会社法796の2・784の2)。
2) 存続会社において決議が必要とされる場合(簡易合併)
消滅会社に対して交付する株式や金銭等の額が、存続会社の純資産額の20%に満たない場合には、存続会社の株主への影響が軽微であるため、株主総会の決議をしないことができる(会社法796-2)。
ただし、合併で承認する資産が債務超過である場合は、存続会社の株主への影響が少なくないため、株主総会の決議が必要である(会社法796-2ただし書)。
なお、特別支配会社とは、ある会社の総株主の議決権の9割(これを上回る割合をその会社の定款に定めた場合にはその割合)以上を他の会社及び特定完全子会社が有している場合のその他の会社という(会社法468-1)。特定完全子会社とは、その他の会社が、発行済み株式の全部を保有する会社をいう(会社法136)。
(4) 株式買取請求権
株式買取請求権の概要、価格決定の流れは、次のとおりである。
1) 存続会社への株式買取請求
吸収合併をする場合には、反対株主は、存続会社に対し、自己の株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる(会社法797-1)。反対株主とは、吸収合併の決議に際しその株主総会に先立って合併に反対する旨を存続会社に通知し、かつ決議の際に合併に反対した株主である。また、議決権を有しない株主や、株主総会が不要な場合においては、全ての株主も反対株主として買取請求をすることができる(会社法797-2)。
2) 消滅会社への株式買取請求
吸収合併をする場合には、反対株主は、消滅会社に対し、自己の株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる(会社法785-1)。反対株主とは、吸収合併に際しその株主総会に先立って合併に反対する旨を消滅会社に通知し、かつ決議の際に合併に反対した株主である。
また、議決権を有していない株主や、株主総会が不要な場合においては、全ての株主も反対株主として買取請求をすることができる(会社法785-2)。
3) 株式買収請求の価格の決定の流れ
存続会社(消滅会社)の株主の株式売買請求の価格の決定の流れは以下のとおりである
(会社法798・786)。
≪株式買収請求の価格の決定の流れ≫
ァ) まず、会社は、効力発効日の20日前までに株主に合併等する旨等を通知する(会社法785-3・797-3)。一方株主は、効力発生日の20日前の日から効力発生日前日までに買収請求の株式の種 類・数を明示する(会社法785-5・797-5)。
ィ) 価格の協議が調った場合は、決定した価格で、合併の効力発生日より60日以内に支払う(会社法786-1・798-1)。もし、価格の協議が調わなかった場合は、31日から60日以内に裁判所に価格決定の申立てる(会社法786-2・798-2)。価格が決定しても、60日以内に支払いがなされなかった 場合は61日以降について年6分の利息を価格に加えて支払う(会社法786-4・798-4)。
(5) 債権者保護手続
存続会社又は消滅会社の経営状態が悪い場合等は、合併により債権者の不利益が生ずる可能性がある。存続会社(消滅会社)の債権者は、存続会社(消滅会社)に対し、吸収合併について異議を述べることができる(会社法799-1・789-1)。存続会社は、存続会社の債権者が異議を述べるべきか否か判断できるように、一定期間内に合併する旨などを官報に公告し、主な債権者には個別に催告しなければならない。また、異議を述べることができる期間は、1ヵ月以上としなければならない(会社法799-2)。消滅会社についても存続会社と同様に公告等や催告を行わなければならない(会社法789-2)。