(1) 基本事項の検討
合併とは、法的手続を経て複数の会社が1つになることをいい、合併には、吸収合併と新設合併がある。吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併存続する会社に承継させることをいう(会社法2二十七)。一方、新設合併とは、2つ以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいう(会社法2二十八)。
実務上では、新設合併を行った場合、所有する不動産について全て新会社に登記しなおす必要があることや、官公庁の許認可等について新たに受けなければならないケースがほとんどであるため、新設合併よりも吸収合併の形態がとられることが多いようである。しかし、吸収合併であっても当然許認可が引き継がれるわけではないので、許認可を受けている会社は、注意が必要である。
合併により消滅する会社(被合併法人)の株主に対し、合併の対価として合併法人の株式や金銭等の対価を交付するが(会社法749-1二)、債務超過会社との合併や親会社間の合併の場合は、無対価なよることもできる。被合併法人は、原則として合併法人に資産等を時価で譲渡したものとされ課税される(法人税法62)が、税制適格合併に該当する場合は、帳簿価格にて引継をしたものとして課税が繰り延べられる(法人税法62の2)。
合併法人は、原則として時価にて被合併法人から資産等を受け入れるが、税制適格合併に該当する場合には、帳簿価格にて受け入れる。合併により消滅した会社の株主は、消滅した株式を売却したとして課税が生じるが、税制適格合併に該当する場合には、譲渡対価は帳簿価格となるため、課税は生じない。
なお、旧商法では、合併比率調整のための現金交付を除いて、合併法人の株式の交付に限られていたが、合併の対価の柔軟化により現在の会社法では、金銭の交付も可能となった。その場合は、株式以外の資産が交付されると税制非適格合併となり、被合併法人の資産・負債を時価により合併法人に譲渡したものとされ(法人税法62)、被合併法人の株主は、みなし配当課税(法人税法24-1一、所得税法25-1一)や譲渡所得税が生じる。
(2) 合併比率の算定
合併比率とは、被合併法人の株式1株に対して、合併法人の株式を何株交付するかを表す比率である。合併比率の算定の前提となる株式の算定方法には、1)簿価純資産方式、2)時価純資産方式、3)類似業種比準方式、4)収益還元方式、5)DCF方式、6)国税庁方式、7)法人法上の評価、などがあり、またこれらの算定方式を併用することも可能である。この合併比率が適正でない場合には、同族会社の場合においては、受贈益等の課税が生じる場合があるので注意が必要である。
※ 合併比率=被合併法人の1株当たりの株価/合併法人の1株当たりの株価
≪株式の算定方式≫ {株価対策(2655) H30/2/14(水)}参照}
1) 簿価純資産方式
貸借対照表に計上されている各資産の帳簿価額による純資産価額をもって株価とみなす方式である。
2) 時価純資産方式
貸借対照表に計上されている各資産を時価に引き直し、その純資産をもって、株価とみなす方式である。また、少額資産及び退職債務など貸借対照表に計上されていない簿外資産及び簿外債務も時価に引き直す。
3) 類似業種比準方式
評価会社の類似する業種の上場企業を選定し、評価会社と類似する類似業種会社の純資産価値等の財務数値を乗じることにより、株価とみなす方式である。
4) 収益還元方式
一定の利益が永続すると仮定した価額を株価とみなす方式で、この場合の利益は、税引き後の営業利益の過去3年から5年事業年度の平均値を用いる。
5) DCF方式
評価会社が将来獲得することが期待される収益又はフリー・キャッシュフローを基に株価を算出する方式である。
6) 国税庁方式
財産評価基本通達178ないし189-7により計算する方式である。
7) 法人税上の評価
法人税基本通達9-1-14により評価する方式である。
法人税における株式の評価は、原則として事業年度終了の日又は最も近い事業年度終了の日における純資産価額等を斟酌して通常取引されると認められる価額とている(法人税法基本通達9-1-13)が、これらの評価には困難な場合が多いため、課税上弊害がない場合に限り、以下の条件の下に、特例として財産評価基本通達178ないし189-7によることが認められている。
㋐ その評価する株主が、中心的な同族株主(財産評価基本通達188-2)に該当する場合には、小会社(財産評価基本通達179)に該当するものとして評価する。
㋑ 純資産価額の算定にあたっては、土地等や上場株式については、相続税評価ではなく通常の取引価額を持って評価する。
㋒ 純資産価額の算定に当たっては評価額と帳簿価額の評価差額についての法人税相当額は控除しないで計算する。
(3) 基本合意の調印
大筋で合意が行われた後に、一般的に基本合意書を取り交わすことが行われている。基本合意書には、➀)合併の目的、➁合併の日程、➂合併の方式、➃合併比率及び算出根拠(基本合意の段階では確定していない場合がある。)、➄当時会社の概要、その他必要な事項を記載する。