事業譲渡を行う(その3 事業譲渡後の対応)

 

(1) 物の移転

 事業譲渡では、譲渡の対象となる資産・負債が個別に移転するので、資産や負債それぞれについて移転の手続が必要となる。不動産が含まれる場合には、所有権の移転等の登記が必要となる。許認可等は、合併や分割と違って移転しないので、改めて申請等を行う必要がある。負債の移転については、債権者から個別に合意を得る必要がある。

1) 譲渡会社の称号を使用する場合

 事業譲渡では、事業を譲り受けた会社が譲渡会社の称号を引き続き使用することが考えられる。その場合、譲受会社が譲渡会社の事業で生じた債務を弁済する義務を負うことになるので、譲受会社は譲渡会社の債務を弁済しない旨の登記をすることで、譲渡会社の債務を免れることができる(会社法22)。

2) 譲渡益がある場合の課税

 事業譲渡においては、資産を時価で譲渡するので、譲渡損益が生じることになり、譲渡益がある場合には、法人税が課税される。譲渡資産の中に消費税の課税対象となる資産が含まれている場合には、譲渡側では消費税の課税売上となり、譲受側では課税仕入れとなる。事業譲渡には、合併や分割のような税制適格と言う規定がないので、課税の繰り延べはない。

(2) 人の移転

 事業譲渡の場合は、従業員の契約関係の移転ついて、個別の承諾を得る必要があり、承諾がない限り譲渡会社との雇用契約が継続するため、会社分割のような労働者保護規定はない。つまり、事業譲渡は、合併のような包括承継ではなく、譲渡会社と譲受会社との契約により個別に承継される。譲渡会社も事業譲渡によって消滅するわけではないからである。労働契約も譲渡会社と譲受会社との合意がなければ譲渡対象とはならない。

 事業譲渡に際して、不当解雇や労働条件の不利益な変更はできない。事業譲渡により従業員を移籍する場合は、対象従業員から個別に同意を得る必要がある(事業譲渡における労働契約の不承継の原則:民法625)。

(3) 残余財産の分配

 事業の全部を譲渡した場合は、譲渡した会社は当然消滅しないので、新たな事業を行うか、解散して消滅させる必要がある。解散した場合には、精算手続きを行い、残余財産が確定した時に株主に分配することになる。残余財産が確定し、株主に分配された場合は、資本金等の金額を超える部分については、税法上配当として課税対象となる(法人税法24-1三、所得税法25-1三)。

(4) その他(競業避止義務)

 事業譲渡では、譲渡会社は譲渡した事業について20年間競業避止義務を負う(会社法21)。これは、譲渡会社は譲渡した事業についてノウハウ等を保有していると考えられるので、競業されると譲受会社が不利益を被る虞があるからである。違反行為に対しては、損害賠償請求や競業行為の差止請求などを行うことができる。