(1) 基本事項の検討
株式交換とは、発行済み株式の全部を株式会社又は合同会社に取得させ、100%親会社となる手続きである。買収された会社の株主に対し、買収する会社の株式を交付することが多いため、株式交換といわれているが、現金を交付することもできる。親会社の株式を交付する場合は、株式の購入に要する資金を用意する必要がないので、M&Aではよく用いられる。株式交換に際しては、交換比率の取り決めが必要となるが、それぞれの会社の株式を評価して双方が合意できる交換比率を算出する必要がある。
株式交換の主な流れは、基本合意書の調印(大筋合意→交換比率算定)⇒株式交換契約の締結(会社法767)(取締役会設置会社は取締役会の承認必要)⇒交換契約書の備置き(備置開始日から効力発生日まで)⇒株主総会の承認(特別決議、略式・簡易手続の場合は不要)⇒反対株主等の買取請求手続⇒債権者保護手続(新株予約権付社債を承継させる場合等に必要)⇒効力発生⇒完全親会社株式の交付
1) 関係法令の検討
株式交換は、商法改正により導入され、その後会社法において規定されている(会社法2三十一)。交換の対価は、当初は親会社となる法人の株式の交付に限定されていたが、現行は現金等の交付も可能となっている(会社法768-1)。株式交換の効力の発生日は、株式交換契約で定められた日となる(会社法768-1六)。交換前に親会社が保有していた子会社株式に対しては、交換の対価は交付されない(会社法768-1三)。
子会社が自社株式を保有する場合には、親会社株式が交付されるが、完全子会社が親会社株式を取得することは禁止されている(会社法135-1)ので、相当の時期に処分する必要がある(会社法135-3)。なお、相当の時期の具体的な期限については特に明確な基準はない。株式交換は組織再編税制の1つとして、税制適格要件が規定されている。適格要件に該当しない場合には、完全支配関係にある場合を除き、子会社の一定の資産について時価で評価することになる。また、株式は、親会社株式以外の現金等で交付された場合は、子会社株式を譲渡したことになる。
2) 株式交換のメリット・デメリット
≪メリット≫
ァ) 買収資金が少なくて済む。
ィ) 通常は債権者保護手続が必要ない。
ゥ) 株主が変わるだけでそのまま別法人として運営できる。
≪デメリット≫
ァ) 売手企業の株主が買手企業の株主になるため支配権に影響を受ける。
ィ) 買手企業が非上場の場合は、非上場株式が交付されるため売手側にとって現金化が難しい。
ゥ) 簿外債務も引き継ぐ。
なお、株式交換は、次に掲げる一定の要件を満たす場合には、税制適格となり課税が繰り延べされる(組織再編税制の要件:法人税法2十二の十六、法人税法施行令4の3-14,15,16)。
≪完全支配関係の場合≫
ァ) 完全支配関係の継続が見込まれること。
ィ) 会社の株式のみを交付すること。
≪50%超100%未満支配関係の場合≫
上記ァ) ィ) に加えて、
ゥ) 事業に関連性があること。
エ) 規模が5倍を超えないこと又は特定の役員を引き継ぐこと。
ォ) 完全子会社の株主が50人未満の場合は、取得した完全親会社の株式全部を継続して保有する見込みである株主の株式数が発行済株式の80%以上であること(議決権のある株式に限る)。
(2) 交換比率の算定
第三者機関に依頼して企業価値評価を行い、当事者間の協議により交換比率を算定する。評価方法は、DCFC方式や純資産方式等があるが、中小企業の場合は、法人税法や財産評価基本通達等を参酌した方法により行うことが実務的であると考えられる。
(3) 基本合意書の調印
本筋で合意が行われた後に、一般的に基本合意書を取り交わすことが行われている。基本合意書には、交換の目的、交換の日程、交換の方式、交換比率及び算出根拠(基本合意の段階では確定していない場合もある)、当事会社の概要、その他必要な事項を記載する。