個人名義資産、負債の調査・検討

 中小企業の場合、経営者個人が所有している土地の上に会社の建物が建っている場合がある。こうした場合は、経営者の所有している土地を会社に賃貸していることが多いと思われる。こうしたケースにおいては、資産のリストアップを行うと同時に、最低でも、直前3期分ぐらいの決算書により、そうした資産があるかどうかを確認しておく必要がある。

 経営者個人と会社との間で土地の貸借が行われており、相当地代の支払いがある場合には、その賃貸借契約書を確認しておかなければならない。相当地代の支払いが行われておらず、無償返還届出が提出されている場合にも、その写しを取っておくべきである。また、それ以外の資産の購入時の関係書類や貸借・譲渡時の契約書などもあれば確認しておく。

 ここでいう相当地代とは、個人が借地権の設定により土地を借りる場合、権利金の支払いを行わないときには、権利金の認定課税が行われる。しかし、権利金の支払いに代えて相当の地代を支払っているときには、権利金の認定課税は行われない(法人税施行令137条)。相当の地代額とは、原則としてその土地の更地価格の概ね年6%程度の金額でとなる。

 会社の資金繰り上、経営者やその親族、または第三者から資金を融通してもらうという場合がよくある。これらの借入金が短期に返済できる見通しのものである場合や計画的に返済されているのであれば問題はないが、長期的なものや高額なものである場合には、返済義務が会社に残ることになるので、早めにその返済計画を立てておくことが必要になる。

 経営者などからの借入金が存在している場合で、経営者の年齢が比較的若い場合は、時間的に余裕があるので、役員報酬や給料に代えて借入金の返済を行うという対策を考慮に入れるべきである。この場合には、その分会社の経費が少なくなる(実際には役員報酬または給料は発生しない)ため、どちらが有利かよくシミュレーションしてみる必要がある。

 さらには、DES(デッド・エクイティ・スワップ)も検討に値する。この方法は、会社の債務を資本金に振り替えるもので、債務の株式化とよばれる。会社に対する債権者が高齢などの理由で、時間的に余裕がなく、上記のような返済計画が立てられない場合、DESを利用する。また、債権者側においても相続の際、債券の場合は、額面で評価されるが、株式の場合は、非上場株式の評価に従うので、相続財産を減少させることができる。

 上記の方法は、会社が債務超過で債権の価値があまりないにもかかわらず、貸付金が多額な場合は有益である。ただし、株主が複数存在し、かつDESを行うことで株価が上昇する場合には、その株価上昇分が他の株主への贈与として、贈与税の対象となるので注意が必要である(相続税法8条)。贈与税の課税を受けないためにも、適正な時価の算定を行った上で、振り替えを行うようにしなければならない。また、平成18年の税制改正により、債権を出資する際、出資債権の時価が額面金額を下回る場合には、差額の債務免除益として評価されることから、注意が必要である。