事業価値の評価

  事業を後継者に継承させるためには、まず、会社の現状を多角的に分析してみなければならない。現状分析には、大きく分けて2つの側面がある。一つは、会社の収支状況や財務状況、従業員の資質といった経営資源の分析である。もう一つは、市場や現商品の成熟度合、競合他社の動向などを把握することで、業界における自社の位置づけを分析する。

 経営資源の分析では、会社の事業価値について分析すると同時に、事業価値を支えている経営資源が現経営者の手腕に依存し過ぎていないか、今後、後継者に対して円滑に承継されて行く可能性は高いかなどについても検討してみる。事業承継後に急激に業績が悪化することが予想される場合は、中長期的な人材育成計画を前もって立てておく必要がある。

 次に市場分析については、会社の強み・弱み、市場の機会・脅威を整理するSWOT分析が定番になっているが、変化の激しい市場を前提に考えると、これだけでは不十分で、バリューチェーン分析やVRIO分析やPEST分析などマクロ的な分析を合わせて行う必要がある。ただし、あまり懲りすぎて分析のための分析にならないように注意が必要。

 これらの分析結果を踏まえ、改めて自社の財務状況を確認し、選択し得る戦略を検討する。ここでは、候補として挙げられた戦略と、それを可能にする財務戦略のすり合わせが主な課題である。具体的には、現状の生産設備、追加投資の可能性、技術力・マーケティング力の強化、これらを担う人材の教育・訓練体系の整備なども検討に値するであろう。

 しかし、ここでは事業戦略の構築がメインテーマではなく、あくまでも事業の円滑な承継を可能にすることであるから、余りのめりこみ過ぎると、後継者の負担になることもあるので、深追いはしないことが肝要である。ただし、将来の不安材料を放置したまま後継者に今後の会社経営を丸投げするというも無責任であることを決して忘れるべきではない。

 上記のように、今後の会社経営に必要な措置を講じることは当然必要であるが、事業承継に際して、相続税・贈与税の負担の他に、株式を後継者へ集中させる場合には、株式の買収資金が多額に必要になる場合が生じる。特に、平成27年1月1日以後の相続・遺贈については、相続税の基礎控除及び比例部分の縮小と最高税率55%とされたことに伴い、納税資金が一層多額になるため、その対策も検討しなければならない。