事業内容の分析(損益計算の分析)

 事業承継を考えるに当たり、まず、検討しなければならないのは、現在の事業内容と損益の状態である。そこで損益計算書から近年の収益状態(特に直近3年間)を分析してみる。但し、利益の概念には、通常以下のような区分があり、その金額と内容を分析してみることで、経営の実態が初めて把握できる(債務免除益などがある場合は特に注意する)。

損益計算書は、1)売上高-売上原価=売上総利益、2) 売上総利益-販売費及び一般管理費=営業利益、3)営業利益-営業外損益=経常利益、4)経常利益-特別損益=税引前当期純利益、5) 税引前当期純利益-法人税等=税引後当期純利益、という構成になっている。この5つの利益概念のうち、中小企業の場合は、本業の利益である営業利益が重要である。

次に重要視しなければならないのは、付加価値生産性と労働分配率である。付加価値とは、純利益、人件費、賃借料、減価償却費、金融費用、租税公課の6つの合計を祖付加価値といい、ここから減価償却費を除いたものが純付加価値である。粗付加価値の場合でいうと、純利益以外の各要素は、損益計算書上の項目では損金(費用項目)に計上される。

付加価値生産性とは、従業員1人当たり付加価値(付加価値÷従業員数)のことである。ということは、付加価値生産性が高い場合でも純利益が多くないか、あるいはマイナスになる事もあり得る。つまり、付加価値の中身が、人件費その他の費用で多くを占められている場合には、その分純利益が少なくなるか、あるいはマイナスになる可能性もあり得る。

また、逆に純利益は計上しているが、付加価値の中に占める人件費の割合が少ない場合(労働分配率が低く、かつ従業員個別の人件費額が少ない場合)には、従業員の処遇をないがしろにして、利益を優先している可能性もある。いずれの場合も明確な基準があるわけではないが、業界や地域の平均と比較して経営状態を総合的に判断しなければならない。

 一方、現状の経営状態があまり高く評価できないからといって、将来の見通しが暗いとは限らない。だからこそ、世代交代が必要なわけであるが、現況を把握せずに将来を展望することもできないので、ここではまず、損益計算書から読み取れる数値から、売上と利益の概念をしっかり押さえ、貸借対照表の分析に進み、最後にこれらの関連性を分析する。