親しみやすいキャラクターをつくる(その2)

 クリッピーがあまりにもムカつくキャラクターだったため、アンチサイトだとか、ファングループ、アンチ動画などがウェブ上で次々に立ち上がった。ナスの率いるチームはクリッピーを生まれ変わらせた。新しいクリッピーを、「それは腹立たしいね!ヘルプシステムのダメさ加減をマイクロソフトに言ってやろう」などと、ユーザー側に立った発言をするようにしたのだ。ユーザーが苦情メールを作成すると、クリッピーが「おいおい!もっとキツく言ってやらなくちゃ!」と煽りたてる。

 こうした変更のおかげで、アンチクリッピーがクリッピーファンに変わった。テストでは、全てのユーザーがクリッピーを好きになり、「彼は頼もしい見方!」と言う人さえいた。フィードバック機能を使っているなら、クリッピー2.0のように、インターフェースを自社ではなく、ユーザーの見方に見せられるような工夫をしよう。優秀なセールスパーソンならその作戦が有効なことをわかっているはずだ。彼らは、不都合が起きたとき、会社を代表して謝るのではなく、顧客の代弁者であるかのように振る舞うのだ。

 人は、特化した装置をより賢いと見なす。人は、テレビのニュース番組を純粋なニュース番組であるとみなした場合、その番組を複数の要素においてよく評価することを、ナスは発見した。コンピューターのインターフェースを「専門家」らしくすると、信頼性が増す。「ビジネス・ノートパソコン設定ウィンザード」と言ったほうが「オーダーフォーム」と言うよりも信頼してもらえるのだ。

 顧客とコンピューターの相互関係を築こうとするなら、人はコンピューターを人間扱いするという前提で考えよう!したがって、適切な社会的スキルを身に着けなければいけない。新人(しかもちょっと鈍い)に顧客と心から接する方法を教え込むつもりになって、自動システムを構築しよう。前記3点のアプローチを単独で使っても、あるいは組み合わせても、会社の自動システムに対する顧客の意識が劇的に向上するだろう。

 マーケティングの基本はあくまでも顧客との間で、価値を最も合理的に交換することである。これには2つのアプローチがあり、1つは、企業の維持発展に軸足を置いた考え方である。すなわち、供給側の企業が円満に発展しなれば、顧客の欲求にこたえられないから、投下した営資本を回収はもとより、目標とする一定の利益を獲得しなければならない。

 もう1つは、顧客の支持が得られなければ、商品(製品)が売れないので、企業は存続することができない。そこで、顧客が獲得する総付加価値を最大にすることが目標となる。この2つのアプローチを、登山に例えるならば、上り口、あるいは登山ルートは異なっても、目指す頂上は同じである。ニューロマーケティングのテクニックを活用するということは、決して顧客の利益より、企業の利益を優先するためのものではない。