親しみやすいキャラクターをつくる(その1)

 チューリング・テスト(訳注:コンピューターの考える能力を判定するためのテスト)などは忘れよう(1950年に考案されたあのテストは、対象となっているコンピューター装置が人工知能を持っているか判定するもので、人間とのやりとりを人間と変わらないほどうまくできれば、人工知能を有するとされた)。なにも人をだまそうとする必要はない。

 よくできた自動システムは、たとえ機械がやっていると解っていても、人に、本物の人間とやりとりしているような感覚を与えることが研究でわかった。では、コンピューターがやっていることでも、「人間」らしさを感じさせるために、企業は何ができるのだろう。実は、人は、コンピューターを人間扱いする傾向があること、やりとりを変えるchanging the interactionとその傾向が一層強まることが明らかになったのだ。

人間が、何も言わなくてもすぐにチームに忠誠心を抱くようになることは周知の事実だ。それと同じように、人はコンピューターとも連帯感を持つことが研究で示された。スタンフォード大学教授、クリフォード・ナスは、被験者を任意に2つのグループに分けた。半分の被験者は、「君たちは青組だ」と告げられ、青いリストバンドをして、青い縁どりのモニターで作業をした。

もう半分は、緑の縁どりのモニターを使い、「君たちは青組だが緑のコンピューターを使ってもらう」と告げられた。人間とコンピューターのかかわり方には2つのグループの間で違いは見られなかったが、コンピューターと同じチームだと言われたグループの方が、コンピューターをより高性能で便利と評価した。また、そちらのチームの方がコンピューターとの「連帯感」を築いたと見え、作業もより熱心にこなした。

 さて、これをユーザーに応用することはできないだろうか。もしユーザーの個人情報を持っているなら、それを使って、例えば、自社サイトを1人ひとりに合わせたインターフェースにできないだろうか(ユーザーの好きなスポーツチームが分かっていれば、インターフェースをそのチームのカラーで彩るなど)。ナスは、人と人との相互関係に関する社会学説の殆んど全てを、人とコンピューターの関係にも当てはめることができるとしている。

 パソコン史上最も嫌われたコンピューターのマスコットの1つが、マイクロソフトの「クリッピー」だろう。クリッピーは、クリックの形をした漫画のキャラクターで、(だいたいいつも)ムダな手伝いをするために、ユーザーがやっている作業についてとんでもない質問を繰り返すことをまるで楽しんでいるかのようだった。