年配者に解りやすい表示をする

 ベビーブーマーや高齢者を対象にしたマーケティングを行っているなら、カギは1つ。シンプルな広告だ。その秘訣は、だいたいどんな広告にも当てはまるものである。邪魔な情報を制御する能力において、特に高齢者の脳は大きく異なることが脳スキャンで示された。その抑制能力の違いが、若い脳と年取った脳の記憶力の違いをもたらす重要な要因であることがアダム・ガザリー博士の研究によって判明した。

 ガザリーは若い成人と高齢者に記憶課題を行わせ、fMRIを使ってそのときの脳を調べたところ、若い脳も年老いた脳も、記憶を形成するための部位はちゃんと活性化したものの、年老いた脳は、無関係な情報を抑制する能力が著しく劣ることを発見した。現在審査中だが、脳波を使った同様の実験で、抑制力の違いは神経処理のスピードが遅くなっていることが示されている。

 ガザリーの最新の研究では、複数作業の際に高齢者の脳の機能が劣るのは、切り替わりの問題であることがわかっている。つまり、邪魔が入った際、記憶作業をやめてそちらの方を処理してしまい、記憶が保存されないのだ。A.K.ブラディープは、著書『マーケターの知らない「95%」消費者の「買いたい!」をつくり出す実践脳科学』でガザリーの研究に言及し、マーケターがベビーブーマーと高齢者に訴求するための次のような作戦を提案している。

・メッセージがわかりやすい

・文章と画像をごちゃごちゃ詰めすぎないレイアウトにする。

・メッセージの周りに白い余白をつける。

・動くスクリーンや音、アニメーションなど、注意をそらすのは避ける。

 簡潔さは、常に心掛けなければならない永遠のテーマである。シンプルなフォント、シンプルな保証システムなど、シンプルなやり方が最も有効だと思われる場合は多い。原則的にいつも簡潔さを心がけることを勧める。それによって、高齢者ばかりではなく、若い脳もこちらが発するメッセージを処理しやすくなる。つまり、高齢者にやさしいということは、若い人にとってもやさしいということである。

 日本のテレビのコマーシャルでも、「そうだ!京都に行こう」とか「あ!こばやし製薬」といったシンプルなものは、ストレートに要点が脳にインプットされる。その上で伝えたいことを順序立てて、具体的に示されるので、抵抗なく受け入れられ、結果として記憶されるメッセージになる。こうした原則は広告に限らず、何かを報告する場合にも通じる。