ユーザーにお返しをする

 多くの人が、リードジェネレーション(訳注:自社の製品・サービスの購入に関心を示す見込み客を獲得すること)のサイトやチャリティーのサイトなど、ユーザーの情報の収集ができるウェブサイトを使っている。たいていの場合、こうしたサイト運営者は、閲覧者に役立つ情報を提供し、そのスペシャルコンテンツと引き換えに、閲覧希望者の連絡先の入力促す。

 価値提供のためのコンテンツは、レポート、ポットキャスト,ウェビナー、ログインを必要とするページなど、さまざまな形態で提供が考えられる。最もよく使われるのは、一言でいえば、「閲覧者にいいものを見せる前に相手の情報を取る」手法だ。ただ、このやり方には落とし穴がある。例えば、そのサイトについて検索エンジン最適化のプロに相談したとすると、すかさず「価値あるコンテンツを登録フォームの後ろにしまい込んでしまったらダメ。Googleにインデックスされないし、リンクもできない。それでは誰も来てくれませんよ!」と言われるだろう。

 ところが、検索エンジン最適化のプロも、運営者も両方満足できる方法がある。ユーザー情報を獲得してから価値あるコンテンツを見せる方法は、そちらの情報と引き換えにいいものを見せてあげましょうという、いわば「ご褒美」作戦だ。価値あるコンテンツで訪問客を引き、それを見たい人は全員フォームに情報を入力しなくてはならないのだから、一見魅力的な作戦に見える。

 実は、フォーム入力を要求されると、閲覧をあきらめるユーザーがほとんどなのだ。特定の情報を求めてそのサイトにやってきた人は、単に「戻る」ボタンをクリックし、よそのサイトで似たような情報を閲覧できないか探す可能性が高い。情報登録して要らないメールや電話が来る危険を冒すのは腹立たしいからだ(もちろん、ログインしないと価値ある情報が見られないようになっているということは、どっちみち、検索結果に導かれてやって来る訪問者も少ないのだが)。

 したがって、「ご褒美」ではなく「お返し」作戦の方が効果的であることが判明した。訪問者が求めている情報を先に与え、その人の情報は後でもらうのだ。イタリアの研究者たちが、先に情報を獲得した訪問者の方が、連絡先情報を渡す確率が2倍であることを発見した。少々直観に反する結果かもしれないが、先に情報を得た訪問者は、フォーム入力を強制されていないにもかかわらず、情報を提供する意思が、強制された人たちの倍になるのである。

 このアプローチが有効なのは、もちろんフォーム入力だけではない。先に恩恵を受けた訪問者は、商品を買ったり、寄付をしたりする可能性が高くなるのは、互恵性という心理学的原則で説明することができる。『Neuro Web Design(ニューロ・ウェブデザイン)』の著者スーザン・ウェインシェンクは、価値あるコンテンツを表示したすぐ後で、お願いの呼びかけをすることを勧めている。互恵性に頼るということは、人間の脳が生まれ持った性質を利用するということだから、訪問者に、こちらの求めることをしてもらえる確率が高まる。ついでに、良いコンテンツがGoogleに引っかかるようになるのでSEO担当者も満足する!

 ウェブデザインではすべて言えることだが、とにかく両方のアプローチを試してみるべきだ。そのコンテンツの魅力度や、情報登録の手軽さによっては、「ご褒美」作戦の方が効率的に情報を獲得できる場合もある。だが、訪問者の行為に頼るより「強制的に情報を取る」露骨なやり方のほうがより多くのリードを獲得できると思い込んではいけない。意外にそうでなかったりするのだ!