CEOをテレビに出してはいけない

 コマーシャルの成否を分かつ要因の一つは、ニューロサイエンスに基づくものである。人にしゃべらせるコマーシャルを撮る場合、メインフォーカスは、登場人物の話すセリフになる。この商品はなぜ優れているのか、なぜ価格が安いのかといった内容だ。研究によって、所作やボディランゲージも言葉と同じぐらい重要であり、言葉と動作のギャップは、言葉の誤用や意外な使い方をしたときと同様の脳波の変化を引き起こすことがわかった。

 コルゲート大学の神経科学者、スペンサー・D・ケリーは、脳波の波形によって計測される事象関連電位(ERP)を使って、身振り手振りの効果を研究している。脳波を計測することにより、様々な脳領域が情報をどのように処理しているかを観測できるという。われわれが文章を読んでいて意味的に不適切な言葉(例えば「トーストにソックスを塗った」など)に出会うと、その電位変動の波形の谷に当る、N400成分と呼ばれる陰性電位が出現する。

 興味深いことに、話者のジェスチャーが話している言葉とマッチしない時も、そのN400が認められることだ。例えば、話者が「背の高い」といいながら低いものを示す手振りをすると、強い陰性電位が観察される。この結果から研究者たちが導き出した仮説は、話し言葉と身振り手振りは、脳で同時に処理されており、見聞きする者は、ジェスチャーの情報も使って言葉の意味を解釈しているということだ。

 何年も前に、様々な身体の姿勢や行動がどんなことを表しているかを紹介する本がたくさん出て、ボディランゲージという用語が定着した。そうした本には、腕組みは拒否のサイン、両手の指先を合わせるのは権威の象徴といったことが書かれており、相手のボディランゲージに注意を払い、その人の気持ちや状態に寄り添って行動することが推奨されていた。

 例えば、見込み客が体をテーブルから離して腕組みをしていたら、営業担当はそれ以上商品の特徴やメリットを訴えて突き進むべきではなく、まず聞く耳を持ってもらうように努めよう...というように。現実に、人はどの道、相手のボディランゲージやジェスチャーを常に読み取っているのだ。ただしその作業のほとんどが意識下で行われている。「あの営業マンはなんだか疑わしい」と感じられるようなときは、おそらくその人の言葉とボディランゲージがミスマッチだったからなのだ。

 なかには、コマーシャルに出ても、リラックスした態度で、自信を持ってメッセージを伝えるビジネスオーナーもいて、プロの俳優よりも効果的である場合もある。しかし、これはあくまで珍しいことだ。印刷広告、コマーシャル、セールスプレゼンテーションなど、いかなる広報活動においても、人の身体動作に注目し、真意を見きわめよう。ジェスチャーや姿勢が、話している内容を裏づけるようであれば、メッセージはより強力なものになる。だが、伝えようとする内容と非言語表現が不一致である場合は、発言効果が損なわれる。