認知難易度に関する研究の一環として、ミシガン大学のヒョンジン・ソンとノベルト・シュワルツは、レストランのメニューがそれに該当することを発見した。研究チームはメニューに載っているある料理について、シンプルな書体で書かれた説明と、読み難い書体で書かれた説明のいずれかを被験者に見せ、料理が必要とするシェフの技術を想定させた。
難解な書体で読んだ被験者は、シンプルな書体で読んだ被験者よりも非常に高い確率で高い技術を必要とすると答えた。したがって、うちの料理は高いだけのことがありますと主張したいレストランは、複雑な書体でメニューの説明書を印刷するとよい。また、凝った書体の効果を一層高めるために、補助手段を使って説明書を解り難くすることもできる。
難しい言葉を使った長い説明も、読む人の理解を遅くし、その料理は多大な手間暇と技術を要するという印象を与えるわけである。もちろん、書体だけではなく説明文自体でも、手間と技術が必要なことを説明すべきであるし、少なくともほのめかしておくべきだろう。マーケティングでは、すべての要素が相乗効果を発揮したとき、最高の結果が生まれる。
この教えは、どんなビジネスにも当てはまる。複雑な書体と難解な文章は、ものごとを難しそうに見せる。自社商品をつくるには非常な手間がかかる、あるいは、自社サービスは高い技術を要すると顧客に思わせたければ、読みにくい書体と難しい言葉を使って、すっと理解できないようにしよう。しかし、知覚的流暢性を操作するのは危険な面もある。
例えば、プログラムやテストに膨大な時間を費やし、ユーザーフレンドリーが売りのソフトウェアをつくったというような場合、手間が掛かったことを伝えようと、凝った書体の長い説明書気をすると、顧客に「使いにくい」という印象をもたれてしまう可能性がある。また、読みにくい文章だと、見込み客が読む気力を失ってしまうことも懸念される。