シンプルな書体を使う

 申込書に記入するよう顧客を説得したり、NPOのチャリティ・イベントでのボランティアを募集したりする必要がある場合は、シンプルで読みやすい書体を使って説明書きを書いた方が、成功しやすい。ヒヨンジン・ソンとノルベルト・シュワルツの行った研究は、書体のシンプルさ、あるいは複雑さが人の情報認知度を驚くほど左右することを示した。  

特筆すべきは、シンプルな書体で説明を読んだ人の方が、内容にコミットする確率が高いとの結果が出たことである。研究者らは、エクササイズメニューを人が実践するかどうかは、その人がワークアウトの長さをどの程度に見積もるかにかかっていると予測した。推定所要時間が長いほど大きなコミットメントとなるから、実践する可能性が低くなると考えたのだ。

ソンとシュワルツは、被験者を2つの対照群に分けて、書体の比較実験をすることにした。片方のグループは、シンプルな書体「Arial」で書かれたエクササイズの説明書を読ませ、もう片方のグループには、全く同じ文章を読みにくい「Brush」という書体で印刷したものを読ませた。すると、驚いたことに2つの被験者の間に大きな差異が生じたという。

それは、同じ説明文でも、読みにくい書体で読んだ被験者は、対象群に比べ、運動の所要時間を2倍近く長く見積もったのだという。読みにくい書体のグループが推定した所要時間は平均15.1分、シンプルな書体のグループは8.2分だった。たった8分で済むと考えたグループの方が「メニューを実践する」と言った確率が高かったというのも驚きである。

このように被験者の推定時間の違いを生んだのは、知覚的流暢性、つまり情報の処理と理解し易さだとしている。また、彼らは、同じ実験をすしのレシピでも行った。「Arial」の書体で読んだ被験者は所要時間を5.6分と推定、込み入った感じの「Mistral」で読んだ被験者は9.3分かかると推定した。KISSKeep it simple, stupid!(シンプルにわかりやすく)という提唱は正しかったことになる。

 ラクにできそうだという推定は、知覚的流暢性(説明の読みやすさ)に比例するため、読みやすい大きさの書体で、シンプルな言葉と文章校正を使って書くべきである。そうすれば、簡単にできそうだと思ってもらうことができ、成功率が上がる。このアプローチはオンラインの文章にも当てはまり、手順の説明文は短く、かつシンプルな書体で表示する。