赤ちゃんの写真を使うときの注意点

 広告業界では、赤ちゃんの写真はどんな画像よりも読者の注目を引きつける」と昔からいわれている。そのため、どんなに広告内容と関連性が低かろうが、あらゆる商品やサービスの広告に赤ちゃんの写真が張りつけられてきた。今にして思えば、そんな広告主たちの手法は正しかった。人間の脳は赤ちゃんの顔や、大人の赤ちゃん的特徴に反応するようにできているからである。

 脳の活動を瞬時に測定できる脳磁図(MEG)という神経画像技術を使って、人間が赤ちゃんの写真にどのように反応するかを調べる実験が行われた。驚いたことに、赤ちゃんの写真を見せられたわずか150ミリ秒後に、被験者の内側眼窩前頭皮質に強い活動が見られた。内側眼窩前頭皮質は情動に関係する部位だ。大人の写真を見せても、この領域は殆んど変わらなかった。

 これは、おそらく進化にかかわる理由があると思われる。人間の赤ちゃんは無力な存在であり、両親はもとより、他の大人たちの気を引くことで生き残る可能性が高くなる。マーケターが直感や従来の調査で得た知識が神経科学の研究によって裏づけられることはよくあるが、赤ちゃんの写真の訴求力はその最たる例である。この研究の興味深い一面は、赤ちゃんの顔に反応する人間の脳のプログラムが、大人の顔を見たときの認知処理にも影響していることだ。

 男性は、赤ちゃんぽい特徴を持つ女性の顔を好むことが研究でわかっているという。一方、女性の嗜好はもっと複雑で、排卵周期のどの時期にいるかによって、男らしい顔を好んだり、赤ちゃんぽい顔を好んだりする。このことから、閲覧者の注意を引きたければ赤ちゃんの写真を使うといいが、商品との関連性が低い場合は、難しくなるかもしれない。

 ともあれ、赤ちゃんの写真を広告に用いるときは、赤ちゃんの目線に注意する必要もある。閲覧者は赤ちゃんの目線とあっていると、肝心の商品やその説明には注意が向かない。広告を見ている人は、広告の中のモデルが見ているところに注目する。モデルがまっすぐこちらを見ている場合は、ただその顔に注意するだけで、ほかへは目を向けないのである。

 広告写真の顔は人の注意を集めるが、必ずその顔が、見出しや商品写真など、閲覧者に見て欲しい広告の主役の方を向いてようにすること、閲覧者は顔をチェックした後、その目が見ているように思えるスポットに、無意識に注意する。この目線効果は、大人のモデルのときでも有効である。読者に微笑かける代わりに、広告内容の方を見ているようにモデル配置したい。