アイディアを守る

 アイディアを守る方法と言えば特許を取ることが一番と考えがちである。特許の取得は確かに高い参入障壁になるが、起業家にとっては、似たようなアイディアで他人に先を越されるようなことはないかという心配だけではなく、小売店で製品を取り扱ってもらえるだろうか、消費者はその製品に目を向け、支持してくれるだろうかなど悩みは他にもある。

 製品アイディアを思いついた途端に多くの人が特許取得に走るのは、アイディアを他人に真似されるのではないかという恐怖感に襲われるためであるが、逆に言うとそれだけ、そのアイディアは、他の人に真似され易い(誰でも考えつきそうな)アイディアであるということでもある。それなのに特許の取得に走るのは、それほど意味がないように思える。

 特許取得にかまけていると、試作品の製造を委託する業者やパッケージを考えるデザイナー、市場テストなどに手が届かないので、最終的に販売を担う小売業者にアイディアがなかなか伝わらない。また、特許の出願には数十万円の費用と3ないし4年の期間が必要である。しかも、その期間に市場はどんどん変化するので、そのたびに修正が必要となる。

 知的財産であるアイディアを保護するのは不可欠である。特許を取得するのはその代表的な方法ではあるが、特許取得よりも早くて容易で、安上がりな方法を検討すべきである場合も多い。特許取得の必要性の有無や出願のタイミングなどについては、意外に選択の余地は広いものである。特許を取得する前に製造して販売を開始しても一向にかまわない。

 特にシンプルなアイディアであれば、特許取得を待つべきではない。特許取得やその他の知的財産保護に関する方策についてはじっくり検討するとして、まず、アイディアとビジネスを守るための別の手段を探ってみる。その点でいうと、大企業の有名ブランドと戦うわけではないから、差別化を武器に同じ戦略グループの競合相手を出抜くことが一番だ。

 この場合のアイディアを保護するうえで最も効果的な手段の一つは、だれも思いつかないような、だれもつくることができないような製品を考案することである。自分のアイディアは自分の知的財産だと主張し、その権利を保護したいのなら、他に類を見ない製品を生み出すしかない。大手が新製品を売り出すまでの長いリードタイムを狙うわけである。