マーケティングの基本

 ものづくりに没頭する発明家は、マーケティングの基本である「その製品は誰のどういうニーズ応えようとして開発するのか」を忘れてしまっていることが多い。その証拠になるかどうはさだかではないが、苦労して特許を取ったものの、そのままお蔵入りなってしまっているものも多い。しかも、その多くは既に時代遅れになっているという現実もある。

 特許はこれまで誰も開発しなかった製品や機能であるというお墨付きを国や国際機関から与えられるものであるから、アイディアを保護するという意味では価値があり、マーケティング上でこれを参入障壁として活用できれば、強い競争力になる。ただし、そこには大きな市場が存在し、競合企業が熾烈なシェア争いをしている状況下でなれば意味がない。

 市場の盲点を見きわめ、それを埋める製品を作るのではなく、まず製品を作ってから売れる市場を探すという発明家は多い。自分が欲しいもの、必要とするもの、好きなもの作ることに意識が傾き、誰が買ってくれるのか、どこで売るのか、なぜ消費者は買うべきなのかという点を考えようとしない。これではまるで製品ありきで自己満足としか言えない。

 自分が買いたくなるような製品を作ることと、売れる製品を作ることとは全く別物である。「作ったものが売れる」という時代は、明らかにその製品を求めている消費者が存在することが事前に把握できていたので、作ることに集中すれば足りたのであるが、現代では必要とするものはほぼ出尽くし、必要なものではなく、欲しいものにしか目がいかない。

 マーケティングが必要なのはまさにこの点である。買ってくれる消費者がいること、売ってくれる店があることを確かめることが肝要である。推測や思い込み、家族や友人、同僚の考えを当てしてはいけない。自分の目で市場が存在することを確かめ、そこで足りないものは何かをあらかじめ調査しておくことを、製品開発に先行させて行なう必要がある。

 それには、自ら買い物に行く。見込み客が買い物をする場所、自分の製品が販売されそうな場所などに足を運ぶことである。大型ショッピングセンター、専門店は勿論、ネットショップ、通販カタログなども忘れてはならない。その他公共機関の統計、業界と製品カテゴリーを中心としたポータルサイト、掲示板、ソーシャルメディアもチェックすべきである。