世の中には無口で誠実な人もたくさんいるが、店舗での対応となるとやはり笑顔で言葉を交わすのがコミュニケーションの基本である。一時話題になったDJポリスなども、軽妙な話術で通行人の笑いを誘い、良好なコミュニケーションが形成された。ましてや、顧客に対する対応となれば、顧客に少しでも好印象を与えるユーモアは恐るべき武器になる。
ユーモアは笑顔を誘い、社員に連帯感を強めることにも効果があり、社員全員の接客技術の向上にもつながる。ある家具店で、アンテークのテーブルが高いと顧客から指摘された時、店主はすかさず、「お客さんのようなお金持ちなら、ニワトリの餌代程度の値段でしょうに」と切り返した。こうした場合、「自分は貧乏人だ」と反論する顧客は殆んどいない。
ユーモアはある種のセンスであるから、そう簡単には身に着けることはできないかもしれない。その場合は、「笑顔で挨拶をする」「商談に移る前に、必ず雑談を交わす」「商談が成立しようがしまいが、気にしていないようにふるまう」「値引きしない」「強引に売り込まない」「嘘をつかない」などの点に注意することで、ユーモア不足を補うことができる。
この時期待される効果は、「緊張をほぐす」「親しみやすさを生む」「怒りを鎮める」「取るに足りない相違をなかったことにする」「信頼構築を助ける」「強く長続きする人間関係作りに役立つ」などである。沈黙は金なりなどという言葉があるが、こう着状態を迎えた時、お互いに言葉を発しなければ何も伝わらないし、何も解決しないことになってしまう。
ユーモアは、機知に富み、知的で人生の不条理や悲哀を理解しているからこそ生まれるものであり、悪ふざけとは全く異なる。仕事の話に移る前に、個人的な話題で相手の心をなごますことで、その後に控えている厳しい話も譲り合えるという場面はよくある。こうした時にユーモアがあればなおのこと、その場の空気がより一層柔らかくなるものである。
このようにユーモアは、仕事をする上でのストレスを軽減させ、肩の力を抜くことにも役立つ。ユーモアのない人間は、障害や失敗に見舞われると必ず動揺する。19世紀の米国の社会改革者ヘンリー・W・ビーチャーは、「ユーモアを解せない人間はサスペンションのない荷馬車のようなものだ。小石に乗り上げるたびにがたがたと揺れる」と言っている。