コミュニケーション術を身につける

 組織目標を達成するために協働するには、必要な情報を共有することが重要である。データに基づいて必要とする情報に作り替えるには、分析力が不可欠であるが、それだけでは不十分である。分析の結果を踏まえて、情報をメンバー間で摺合せ、目標達成のために最もふさわしいと共有できるものに仕上げていかなければ、ビジョンも戦略も生まれない。

 つまり、情報を積み上げ組み立てることで、整合性のあるビジョン、戦略、ソリュウションを練り上げることができる。これらのプロセスには、必ずコミュニケーションが介在することになる。リーダーシップは説得力そのものであるとも言われるが、それは、こうした一連の手順を踏んだ上でのことであり、決して強引な指導力を意味するものではない。

 リーダーに求められるコミュニケーション術を身に着けるには、まず、自分の話は少し控えめにして、相手の話によく耳を傾けることである。どんなに説得力があり、論理的な話しぶりでも、一方的にまくしたてられると、相手はとりつくいとまがなく話の内容もよく消化しきれない。といっても、相手の考え方に迎合したり、共感したりする必要はない。

 人は自分の話をよく聞いてくれる相手に対しては、同じように耳を傾ける傾向があるから、自分の話よりも、相手の話に耳を傾けることでコミュニケーションが良好になる。そうすることで、相手の不安や関心事に気づき、徐々に話がかみ合ってくるので、より一層共通点や相違点が明確になり、お互いギャップを埋める方策を模索できる余地が生まれる。

 ロジカルで滑らかな話は、聞いていて確かに気持ちがいい。特に講演会などでは心に響くのは確かである。しかし、時間が限られた会話の場合、お互いの立場を越えてうまくコミュニケーションをとることは難しい。だからこそ、コミュニケーションの達人は、まず、相手の話に耳を傾けるのである。つまり、コミュニケーションの達人は話し上手とは違う。

 すなわち、リーダーに求められているコミュニケーション力とは、話の組み立てや流ちょうなしゃべり口ではなく、メンバーの考え方によく耳を傾け、情報のすり合わせができることである。元来、人は他人のことには関心がなく、自分のことしか関心がないものである。このことを念頭において話すことが、良好なコミュニケーションの秘訣なのである。