持続的競争優位性

 競争優位性というと独自の強み(USP)を持っていることということになるが、これは必ずしも製品自体の強みだけを意味するものではない。確かに高度な技術力を駆使して高品質の製品を次々に開発することで独自色を出している企業もあるが、プラットホームの構築やソリューションビジネスとしてUSPを構築している企業など様々なものがある。

 新製品が次々に登場する現代において、ハード面の品質のみに頼り、優位性を保つことは困難な状況にある。特許の取得などにより戦略上の強みを持続させるという方法はあるが、技術革新の速さを考えると、長期的な競争優位性としては不安が残る。それゆえ、ジレッとなどでは、中核となる製品に関連する特許を積み重ね他社の参入障壁を築いている。

 ここでいう持続的競争優位性とは、企業イメージやブランド力、これに基づいたサービス商品といったものが統合化された優位性のことである。例えば、飲食物や自動車を購入しようとする場合、コアとなる品質である、食べ物の美味しさや自動車の乗り心地で、明らかに優れていると判別できるとは限らず、また実際にそれを基準に購買決定していない。

 いき届いたサービス、洗練された店構え、関連商品などの品揃え、企業の評判、明確な戦略領域の設定などで差別化を図っている。しかし、こうした長い間かけて形成されたブランド力も時代と共に変化する。例えば、以前には考えられなかった、買物行動が見られるようになった。高級ブランドのバッグを持った女性が百均で買い物をするなどである。

 そうかと思うと、高級ブランド店が、戦略領域を越えて低価格商品に手を伸ばし、従来の固定客からそっぽを向かれてしまったという例もある。こうした買物行動や購買態度は、「必要」による購買と、「欲求」や「雰囲気」によるものとでは異なるということである。したがって、何をもってUSPとするかは企業独自の経営理念やビジョンによって異なる。

 一世を風靡した、「ワンストップショッピング」というコンセプトは影が薄れ、カテゴリーマネジメントを中核に据えたコンセプトショップが主流になりつつある。これらは、いずれも、顧客のニーズや欲求を重視したスタンスを取り始めたということであるから、中小企業にも、市場を創造し独自の強み(USP)を構築するチャンスであるはずである。