人材の育成

 企業内で社員に面接してみると、以外にも給与などの処遇面での不満はそれほど多くはない。それは、地域や業界の水準が情報として知れ渡っているため、あまり格差がないことによるものかもしれない。もっとも不満に思っているのは、上司から信頼されていないこと、仕事に対する評価が不公平であること、やり甲斐が感じられないことなどが多い。

 これらの点を踏まえると、社員を信頼してある程度の裁量権を与えることで、チャレンジ精神を刺激し、結果を重視する方針を明確に打ち出すことである。そのためには、KPI(重要業績評価指標)を明示し、公正な評価制度を導入することが望ましい。しかし、ビジネスを立ち上げた当初は、あまりにも制度に拘っても反って逆効果になることもある。

 そこで、まずはチャレンジを好む社員に好きな仕事をさせてみる。その上で、厳しい批判とともに、褒めるべきは社員の前で誠心誠意褒める。有能な社員は甘やかされることを望んではいないし、公平であればチャレンジ精神が萎えることはないはずである。もちろん、これに処遇面が伴えばなお結構であるが、何よりも責任のある職務を与えるべきだ。

 このようにして、やり甲斐のある仕事を与えられると、より高度で難しい仕事に挑戦するようになるが、社内のサポートだけでは難しい局面に打ち当る。それは、業界特有の不文律や内部事情といった公のシステムからは得られにくい情報である。今日では、ネットの検索でかなりの情報は得られるが、長年の経験がものを言う業界ではいまだに存在する。

 業績が停滞している企業の多くは、次のような共通した特徴がある。1)業績が上がらないのは社員の能力が不足しているからである。2)何度注意してもやる気を起こさない。3)処遇面についていつも不平不満が絶えない。4)経営理念が曖昧又は共有されていない。5)目標はあるものの、これを達成する戦略が十分に練られていない。6)KPIが社員に伝わっていない。

 すなわち、これらの特徴は、前段に挙げたやり甲斐のある仕事のやり方とは真逆である。お金は、最大の評価指標ではあるが、最大の動機づけ要因ではない。この点については、企業の財務諸表を分析してみても色濃く表れでいる。それなのに、改革に対してアクションを起こさないのは、起業時のボタンのかけ違いが大きく影響しているように思われる。