現在市場に出回っている製品は、既に成熟期を迎え、間もなく衰退期に突入しようとしている時、これからその市場に同種のものを主力製品として投入するものは無謀であるように見えるかも知れない。例えば、パソコンが出回る前の計算機や携帯電話が普及する前のポケットベルなどは、確かにこうしたセオリーが当てはまる典型的な製品といえそうだ。
しかし、計算機やポケットベルも全く存在価値を失ったわけではない。しかも、このように技術革新が飛躍的に進んだことで、影が薄くなった製品はそう多くはなく、多くの製品は既存のものに改良を重ね時代と共に変化して来たものである。「木を隠すなら森の中」という諺があるが、逆もまた真なりで、同種類の中にキラリと光るものを置くのは目立つ。
一方では消費者の安全志向に応えながら、他方では小さな差異で拘り思考を誘うというやり方で、業績をジワリジワリと伸ばしてきた企業は結構多い。一見定番商品を扱っているように見えて、「差異化」「低価格」「販売方法」などを武器に、存在感を高めている企業は多い。つまり、ハイリスクでなければハイリターンは期待できないということではない。
このように考えると、前代未聞の製品を発明しなければ起業に成功しないというのは明らかに思い違いである。要は販売に適した既存製品を選択し、その製品に付加価値を加える方法を探すことが最も大切である。そのためには、既に実績を上げている製品やサービスを土台にして、性能や利便性を向上させ、消費者の潜在ニーズに訴えることに尽きる。
それには学習や研究のために時間や費用もかかる。こうしたリードタイムを充実させるためも、はじめはサイドビジネス的な入り方の方が安全である。それは、時間の経過とともに財布が満たされる仕組みになっていれば、計画的に製品や市場の動向、それに収益を得る仕組みについてリサーチできるからである。これは臆病ではなく堅実なやり方である。