だが、「お金を無駄にしたくない。仕事を辞めて全財産を投げ打つことなどできない。創業しフリーになるのは魅力だが、うまく行くかどうか心配である。自分の行動に責任を取るのは当然だが、失敗はしたくない。時に素晴らしいアイディアを思いつくこともあるが、それをどう生かしたらよいのか解らない。」こうした不安を抱えている企業家も結構いる。
前者のようなリスクを恐れない勇気ある起業家は、確かに魅力ある人間像であるが、本当に起業家として成功する可能性が高いのだろうか。もしも、起業に成功した人が自己評価したなら、圧倒的に後者のような不安を抱えながら、これを回避する方策を講じた起業家の方が多いものと推察される。実際に、これまで出会った創業者は後者のタイプが多い。
考えてみるまでもなく、事業を起こしマネジメントするということは、製造や販売だけではなく、マーケティング、雇用・人材教育、資金調達など実に多岐にわたる。経営とはシステムそのものであるから、当然リスク管理も含まれる。こうしたことに不安を感じるからこそ、失敗しないための方策を講じる智慧も育つるわけで、これはプラス要因である。
慎重さがあるからこそ、成功の確率が高くなる。安全性、秩序、規則性を好む性格はむしろ起業家が確実に収益性を高めるための重要な要件なのである。学者の中には、ベンチャー企業でなければ勝ち抜けないなどと言ってはばからない人もいるが、それはたぶん経営革新のことを指しているのだろう。不安を感じることとは次元の異なる考え方である。
サイドビジネスとか、週末企業など、いろいろの呼ばれ方をされているが、要はリスクを最小限に抑えるためのテストマーケティングと位置づければよい。市場が自分のアイディアを受け入れてくれるという見通しが立ち、本業からの収入よりサイドビジネスの収入が上回った時点で本格的操業に切り替える。これこそが起業の王道であるといってもいい。