起業を目指す人が最初にやるべきこと

 起業を目指す人が最も陥り易いのが、自分のアイディアを客観的に評価できていないことである。つまり、これまでになかったアイディアであることに舞い上がり過ぎて、「その製品は売れるのか」という自問自答を忘れてしまうことである。「売れるのか」という疑問は、言い換えれば「誰が買うのか」「どれくらい買うのか」などの疑問でもあるわけである。

 例えば、ハンマーで叩いても壊れない、あるいは水中でも壊れない腕時計を製造する技術を開発した場合を考えてみると、そうした機能をもつ腕時計を必要とする(付加価値を感じる)人がどれだけ存在するのかを、まず把握しなければならない。この場合、こうした製品に対するニーズがあることを事前に把握できていれば、売れる見込みも立てられる。

 起業を目指す人からの相談で、一番気の重い問いかけが、「その製品を誰が評価しますか」である。夢を打ち砕くような質問であることは承知しているが、「これまでない製品である」ということと、「売れる商品である」ということは別のことである。ちょっと意地悪な言い方をすれば、これまで存在しなかったということは、必要性もなかったのではとも言える。

 以前、開発した製品が特許を取得した人がいるので、売り出すための相談に乗ってほしいという案件が通産局(現経産局)から持ち込まれたことがある。この時も、開発者は今すぐにでも売り出したいので、どんな手順で進めたらいいかというものであった。そこで、業界の裏事情を少し調べてみたら、結果は全く悲惨なもので、必要性はほとんどなかった。

 しかし、こうした例は珍しいことではなく、開発者や家族が思うほど素晴らしいものではないことが多い。何が欠けているかというと、製品が売れる仕組みについてあまりにも配慮がないことである。つまり、マーケティングに対する知識が不足していることが共通した特徴である。興味ある業界でアルバイトをするなど最小限度の修業が必要と思われる。

 こうした点を考えると、自分が現在勤務している事業(精通している事業)に関連するものであることが、不安を和らげる一番の強みとなるであろう。つまり、サイドビジネスの強みを活かすことである。ここで採算性を確信できれば本業に切り替える。もちろん、ここからが本格的なビジネスの仕組みを習得する本番であり、現状に甘んじてはいけない。