なるほどこれらの要素は、確かに経営者の資質として必要なものであるかもしれないが、同時に、自分の好みであるという側面も否めない。つまり、望ましい経営者像とは、企業や社員の視座によって見方がわかれるもので、経営者として成功を収めた根源的な要素であると特定する根拠には極めて乏しい。経営者自身に同じ質問をしてもほぼ同じである。
私の経験からいうと、「どうしてこの人が事業家として成功したのだろう」と思わずにはいられない経営者は結構多いように思われる。そして、さらにいうなれば、大抵はすごく臆病で小心な人が多いようにも感じる。だからと言って、臆病で小心者であることが事業家として成功するとまでは言えないが、少なくとも事業成功の妨げにはなってはいない。
それもそのはずで、そもそも、「臆病」とか「小心者」という言葉は、他人をあざ笑うとき、または自分を卑下するときに用いる言葉で、「思慮深い」、「失敗したくない」といったリスク管理に通じる概念も同居しているものである。したがって、事業に成功すれば、経営管理能力に優れていた評価されるが、裏目に出れば、臆病とか小心者の烙印を押される。
例えば、工事中のビルの下を通るとき、危ないので回り道をする人と、しっかりガードされているので、心配ないと考えそのまま通り抜けようとした人がいるとすると、結果的に何もなければ、回り道した人は「臆病者」と笑われる。しかし、事故に遭遇すれは、「思慮深い人」として尊敬される。このように物事は結果によって評価が異なるのが常である。
起業に成功するのも失敗するのも、最初の確率は50%であるから、これを高めるためにどれだけ慎重に事を進めたかが、将来を左右することになる。そう考えれば、成功を収めたと評される経営者は、水面下で葛藤を続け現在の地位を勝ち取ったことは容易に推測できる。つまり、起業を目指すものは、臆病者であることを恥じる必要は全くないのである。