インターネットの発達によって、顧客の購買決定の手段が実店舗だけでなく、Web上に拡大し、顧客は、より安く商品を入手できるチャネルを、いつでもどこでも手軽に選択できるようになったことが背景となっている。身近にある実店舗は商品を実際に見て確かめるだけのショールームとして使われ、より安いECサイトで購買を実行されるため、店舗に客が来ても商品が売れないという現象が発生している。
特に買回り品や専門品においてその影響が大きく、家電製品やブランド品でショールーミングが増えている。最近では、スマートフォンなどのデバイスを利用して、売り場で価格やその他の商品情報を確認する客が増えてきており、中には、その場でオンライン注文を行う顧客もいる。こうしたデバイスの進展によるショールーミングの増加をチャンスと捉え、商品比較用のWebサイトやアプリにより情報提供するECサイトも増えてきている。
商品のバーコードを読み取って、何万もの店舗から比較して、最安値を検索できるアプリなども開発され提供されている。小売店は、購買決定の決め手が価格に置かれている現状を打破できなければ、流通網の維持や店舗運営、従業員といったコスト要因に影響されるため、ECサイトに対抗することは難しい。小売店側は、商品知識に精通した店員を育成し、独自のサポート提供、実店舗でのイベント活動など、ネット通販には不可能なサービスを提供することで、「どこで買うか、どこが安いか」といった競争から脱却するかが課題である。
日本国内の小売業では、米国と違って店員の商品説明能力やサービスの品質が高いため、ECサイトとの差異化は可能という見方もあるが、実際のところ顧客の価格反応は非常に高いため、今後、実店舗とネット通販との競争は激しくなることが予想される。しかし、小売店にはそれなりの利点もあるはずである。例えば、コミュニケーションの近さや、きめ細かなサービスを付加することで、実店舗ならではのコンサルティング販売も可能である。
つまり、ECサイトなどの通販は、図らずも実店舗の機能をただ乗りする形にはなってはいるが、小売業の資産の負債化を狙っているものではなく、むしろ、その存在の恩恵を被っているわけであるから、ECサイト側としても、小売業の存立基盤を根こそぎ奪ってしまうような戦略は得策ではないはずであり、お互いに協調できる戦略を模索するべきである。