ニーズの変化とその要因

 心理的アンバランス、生理的アンバランスを解消したいというニーズは不変のものであるが、その充足方法は一つではない。まして、ニーズ自体が変化すれば、当然、その充足方法も変化するわけでるから、根源的には同じであっても表面的には違ったニーズに位置づけられるので、商品やサービスの選択の裏づけとなる市場規模(ニーズ)も変化する。

 全ての人は、心理的アンバランス、生理的アンバランスを解消したいと願い、そのニーズを充足するため、最良の選択肢を求めて行動しようとする。しかし、諸般の事情からその充足手段を入手することが不可能であることに気づいたり、あるいは費用対効果という観点から、断念せざるを得ないという結論に達し、ニーズを変えることがしばしばある。

 すなわち、ニーズを満たすための出力とニーズを満たすことのバランスを経験則や客観的事実から判断し、ニーズのレベルを下げるか、あるいは異質のニーズにスイッチする。例えば、勉強の質量を最大限にアップしても、志望校への入学は無理であると判断した場合、学校のレベルを1ランク下げるか、あるいは、進学のそのものを断念して仕事を探す。

 こうしたメカニズムにより、期待と効果の連鎖を仮説によって推測し、本音のニーズは徐々に修正されることになる。こうした場合、本来ならば心理的アンバランス、生理的アンバランスも解消されないということになるわけであるが、実際には、結構充実した人生であったと自負している人も多いはずである。つまりニーズとは変化するものなのである。

 このように、ニーズは社会環境や個人の学習による価値観の変化などにより変貌するものであり、それが突発的理由により生じたものであっても、その時点におけるニーズであると認識される。そしてそのニーズに応え得る機能を持った商品やサービスが登場し、需要を形づくる。もちろん「ニーズ」と「需要」は同じものではないが対応する位置にある。

 すなわち、需要はより具体的で、ニーズを満たす商品やサービスに対する欲求を指すが、ニーズは、心理的アンバランス、生理的アンバランスを解消するための手段全般に対するやや漠然とした欲求である。しかし、需要はニーズの内数にあたる概念であるとも言えるわけであるから、「需要の変化」は「ニーズの変化」を投影したものと見ることもできる。