変化するニーズ

 ニーズの大元である「幸せな人生を送りたい」というニーズは基本的には変わらないとしても、それを実現するための手段(選択肢)は多岐にわたり、特定のニーズとして最初から確定しているわけではない。内的あるいは外的刺激により知覚された情報を総合的に整理しながら、暫定的にニーズを絞り込み、購買行動(商品やサービスの購入)をとる。

 その後、購買した商品・サービスにより得られた効用を自己の満足水準に照らし合わせ評価し、満足度を測定する。その満足度によって、初期のニーズは修正あるいは変更され、新たなニーズが発生する。そしてそのニーズは、「強弱」「広がり」「種類」「重み・優先度」が変貌しながら新しいニーズとなる。場合によっては最初のニーズが消滅することもある。

 強弱は内的刺激による満足度とも大きく関係するが、外的刺激により、他の要素との関係で高まったり、低くなったりする。例えば、健康のためにと思って始めたテニスが、有名選手の活躍により一大ブームを引き起こしたことにより、競技人口が増加したのをきっかけに、最初はそれほど強くなかったニーズが、より強いものに変化したという時である。

 広がりもまた強弱や種類の変化に影響を与えるとともに、優先度や種類にも影響を及ぼす。つまり、消費者は常に心理的アンバランス、生理的アンバランスを解消したいというニーズ抱えているわけであるから、そのニーズを充足するに相応しい手段を模索しているとこになる。したがって、広がりの度合いの変化には常に注目してニーズを修正している。

 種類の変化は、広がりと密接な関係があるが、現状のアンバランス解消法に対する満足度との関連性が強いものと思われる。すなわち、現状の満足度が低ければ、新しい刺激(情報)を求めている筈なので、より適正な解消手段が他にあることを知れば、当然新しいニーズに変化していくことになる。その時は、全く異なったニーズにもなる場合もあり得る。

 重みや優先度の変化は、ある一定の範囲内でスイッチする場合もあるが、ライフステージの変化により起こることもある。例えば、これまでは積極的に健康管理に気配りし、より強固な心身を作るために励行してきたスポーツが、疾病などにより不可能になったという場合、向上したいというニーズが、回復させるためのニーズへの変化を余儀なくされる。